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禍福は糾える縄の如し
幸村精市の考察

幸村side

事件はテストが終わった後、梅雨も明け始め、夏の日差しになる頃に起こった。


「 雪花 、その袋何?」

という吉成さんの発言に

「お弁当。私ちょっとA組行ってくる」

と、返しその袋を持ったままA組へ行った。

え? 何、お弁当って手作りお弁当的あれ? それもしかして誰かに渡すとか?


「つけるか」

ノートを構え、開眼した柳がいた。

「そうだね」

つけないわけがないだろう。

「あたしも行くー」

予想通り吉成さんも参戦。
さあ、目指すはA組だよ。



A組付近へ行き、 雪花 を探す。何処にいるんだ。

「幸村君たちなにやってんだよぃ」

「限りなく怪しいナリ」

「丸井、仁王静かにしろ。目立ったらどうする」

「いや、既に怪しすぎて目立ってるからな」

今の俺たちは柱に隠れるようにして進んでいる。なんかこの方が尾行してるみたいで楽しいだろ。

「あ、 雪花 発見!! ……と、真田君?」

吉成さんの指差す方向を見れば確かに 雪花 と真田がいた。発言した吉成さんを始め、柳や丸井、仁王も目を丸くしていた。もちろん俺も。

真田? 何してんだよあいつら。

ここからじゃ声までは聞き取れない。だけど 雪花 がさっきのお弁当を渡して真田が赤くなっているのが見えた。しかも 雪花 はいい感じに微笑んでるし。あいつらそういう関係だったの? 真田この前『我々にはまだ早い!!』って言ってよね。何か納得いかないから…………………突撃!!


「さーなーだ」

「幸村? 何か用か?」

案外冷静だな。もっと慌てるかと思ったのに。そして横から柳が出てきて言った。

「率直に聞こう。お前たちは付き合っているのか。その弁当はいわゆる愛妻弁当というものではないのか?」

「…………………」

あれ? 何も反応しない。

「違うわ!!たわけがぁぁぁぁぁ!!」

「真田五月蝿い」

顔を真っ赤にした真田にチョップしたら倒れた。まあ、いいや。すぐ起きるだろ。

「 雪花 説明して」

「実は今日の朝……


昨日の夜遅くまで勉強していたせいでいつもより遅く登校していたところに久しぶりの感覚が来た。

「 雪花 ちゃーーーん!!」

ドンッという衝撃と供に頭の上から声が降ってくる。

「久しぶり。元気だった?」

「おかげさまで。そっちも相変わらずですね。京一郎さん」

真田弦一郎の兄、真田京一郎だった。

「朝から 雪花 ちゃんに会えて嬉しいよ」

「私はどうでもいいです」

「相変わらずつれないな。……そうだ。 雪花 ちゃんに頼みたいことあるんだけどいいかな?」

「事と次第によりますけど。何ですか?」

「この弁当、弦一郎に届けて欲しいんだ。あいつ今日忘れていったからさ」

「それくらいなら」

「それじゃ頼むね」



そしてさっき………


「真田君、これ。京一郎さんから頼まれたんだけど。お弁当だって」

「すまん 結城 。気が抜けていた」

「いや別に届けるくらいなんてことないし。それにしても真田君も忘れ物なんてするんだね」

「む…かたじけない」

「真田君顔真っ赤だよ」


………というわけです」


「ふーん」

出た。真田京一郎。昔から 雪花 に絡んでくる。 雪花 曰く、真田兄弟は似ているとか。でも俺はそう思わない。あいつは真田の兄にしては物事を上手く進めるのが得意だ。真田は真っ直ぐで若干不器用なところがある。それに嫌みを言っても真田は気づかないけど、真田京一郎は気づいた上で和やかに返してくる。周りの評判は真田家は兄より弟の方が怖いというけど、そうは思わない。チャラチャラした態度をとってるけれど本心は明かさない。俺はそんな人のほうがよっぽど怖いと思う。だから俺はあいつが苦手だ。

「幸村君、難しい顔してるけどどうしたの?」

「なんでもないよ」

これだからダメなんだ。 雪花 は何も気づいてない。真田京一郎があの笑った顔の下で何を考えているのか。もしかしたら 雪花 が一番頼りにしてるのは真田京一郎かもしれないと思う時がある。それはなんとなくだけど。それが許せない。とにかく真田京一郎には負けたくないんだ。だって俺たちのモットーは『常勝』だろ。何事でも負けは許されないんだよ。

「なんだよぃ。つまんねえな」

「丸井君どういうこと?」

「真田とお前が付き合ってると思ったのに違うのかよ」

「我々にはまだ早いと言っているだろうが!!」

「付き合ってるとか無いね。あり得ない」

「 雪花 はそういう系の話になるとそればっかり。つまんない。好きな人とかいないの?」

「え、いないけど。というかコイバナとか興味ないし、別に無理に好きな人とか彼氏とか作らなくてもいいと思うし、仲のいい友達だからって変にそういう関係に結びつけるのもなんか違う気がする」

「お前本当に中学生女子かよぃ…」

「ブンちゃん女子にはいろいろいるんじゃ」

「仁王君がそういうこと言うとなんか説得力あるよね。中身ただの駄々っ子なのに」

「 雪花 ちゃん何気ひどいぜよ」

「本当のことでしょ」

最近 雪花 の仁王への態度が変わってきた。どうやら仁王の本性の駄々っ子の面を知ったらしい。テニス部では仁王が柳生にいろいろ無理を言ってるのを聞くけど、仁王は基本女子に弱いところを見せようとしない。それが弱味になったら困るからだとか。それを 雪花 に見せたっていうことはそうとう信頼してるってこと。

雪花 ってある意味凄いよね。容姿がずば抜けて良いとか、動作が可愛らしいとか、細やかな気遣いができるとかじゃないけど人に好かれる。何かが凄いよりこういう性質の方が好かれるのかもしれない。飾らない性格っていうのかな。特に本人何も考えてないんだろうけど。
俺だって人に好かれる部類ではあるだろうけど何か違う。何が違うのかはよく分からないけど。きっと分からないからそれが分かりたいから 雪花 の近くにいるんだと思う。きっと得られるものは大きいはずだから。


キーンコーンカーンコーン


「あっ、お昼終わっちゃった」

「 雪花 と真田のせいだよ」

「私のせいなの!?」

「そうだな」

「 雪花 のせい」

「柳君に麗まで…理不尽だ」

「 雪花 五月蝿い」

それにこのやり取りが心地いいんだ。だから、俺はこの子の友人でいる。

幸村side 了




「なあ、仁王」

「なんじゃブンちゃん」

「 雪花 って好かれてるっていうか大事にされてるよな」

「ブンちゃんにしては鋭いのう」

「俺って天才的ぃ」

「丸井、天才でもなんでもいいから早く教室入れ」

「仁王はいいのかよぃ!!」

「仁王ならとっくに席に座ってるぞ」

「仁王速すぎだろぃ!!」

雪花 たちが帰った後で仁王と丸井と先生でこんな会話がされていたのはE組の4人は知らない話なのだった。


幸村精市による考察 了













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あきゅろす。
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