[携帯モード] [URL送信]

禍福は糾える縄の如し
すごい先輩


「よっしゃぁぁぁ!!」


私はかつてこんなに嬉しかったことがあるだろうか。いや、ない。

「雪花 五月蝿い」

「周りの迷惑を考えろ」

「……すいません」

私、もともとそんな五月蝿いとか言われるキャラじゃないんだよ。静かまではいかなくてもそんな喋る量は多くない。あれだ、教室片隅系。あと、この二人は私の行動抑制になっているのは確かだ。

では、なんで私がこんなに叫んでしまったか。何にもないのに無闇に叫んだりしないよ。実は、この前のテストでついに柳君に勝ったのだ。2回くらい連続で負けてたから本当嬉しい。

「ゆっきーも柳も雪花 に対して厳しいよね」

笑いながら麗が言ってくる。笑い事じゃないんだよ。コノヤロー!!

一人で幸村君の犠牲から逃げたくせに!! この前二人の興味が麗に向いてたから今後は私への被害が減るのかと思ったら全然そんなことなかった。

「雪花 ………犠牲ってなんだい」

「なんでもないです!!」

?マークついてなかった。恐ろしい幸村君。

「そういえば」

唐突に言い出す麗。

「雪花 、今回のペナルティどうするの?」

忘れてた。勝敗にこだわってて何も考えてなかった。

「俺に勝って満足していた確率99%」

ほぼ100%じゃん!!

「忘れてないから」

「なら、ペナルティの内容を言ってみろ」

どうしよう。…………………そうだ!!

「売店でお昼ご飯買ってきて」

今日はお弁当持ってきてないんだよね。

「………雪花 すごい過酷なこと言うんだね」

「麗どういうこと?」

「そっか。雪花 はお弁当派だもんね」

「売店に行ってみれば分かるよ」

なんなんだ……。どんな戦地なんだよ売店は。



「うおりゃあぁぁぁ!!」

「今俺の足踏んだの誰だぁぁ!!」

「それ私のよ!! 横から手出してんじゃないわよ!!」

本当に戦地だった………。

「こういうことだ。お昼時には全校生徒の約1/3が集まる。運動部の中にはあえてこの中に挑ませてトレーニングとする部活もある」

どれだけハードな部活なんだよ。
………なんか柳君に悪いような気がしてきた。でも、ここで行ってもらわないと私のお昼がない。

「買うのはメロンパンと緑茶でいいな」

また私の言おうとしたことを……。データか。

「柳先輩買ってきたッス!!」

「これどういうこと……?」

「お前がペナルティの内容を言った時に既に電話しておいた。こいつの教室の方が近いからな」

なんか五月蝿いのが来た。というかこの五月蝿いの切原赤也じゃない? その五月蝿いのは麗の方を見て目を輝かせた。

「あっ!! 麗先輩じゃないッスか」

「赤也じゃん!! 久しぶり!!」

「吉成さん赤也のこと知ってるの?」

「赤也は出身小学校同じだからね。家も近所だし」

完全になつかれてるよね。

「雪花 は初めてだよね。例の紫先輩の弟の切原赤也」

やっぱりあの切原赤也か。

「赤也、こっちはあたしの親友の結城雪花 」

「(一応)よろしく」

「なんであんたが柳先輩から頼まれて買った奴持ってんだよ」

ああ、ペナルティのことか。

「もしかして柳先輩のことパシりにしてんの!?」

「ちが「そうだよ」

「幸村君!?」

何言ってるんだアンタは。

「(ペナルティとはいえ)本当のことだろう」

副音声が聞こえるから違うとは言えない。

「先輩スゲー!! 俺、切原赤也っていいます」

さっき麗に言われたから知ってるって。

「今日はケータイ持ってないんで、今度会ったらメアド教えて下さい!! じゃあ!!」

それだけ言って走り去る切原君。

「あの子話聞かないでしょ」

「ああ」

「そうだね」

「うん」

三者三様しかし、同じ意味の答えが返ってくる。そうか、切原君は話を聞かない子なんだね。

「赤也をものの数分でなつかせるなんて雪花 もすごいね」

あれを見てただなついたように見えるなら頭を交換してほしいよ麗。


「いろいろあったがこれで赤也もトレーニングクリアだな」

「トレーニング?」

まさか…「運動部の中にはあえてこの中に挑ませてトレーニングとする部活もある」ってテニス部も? っていうことは私使われただけ?
隣で笑う柳君と幸村君に若干恨みのこもった視線を投げるが分かりきっていたことだが全く効果なし。
切原君、君の先輩たちは恐ろしい人たちばっかりだよ。気をつけて。




その日の切原家

「姉ちゃん!! 今日すごい先輩見つけたんだぜ!!」

「そう。どうすごいのよ」

「あの、柳先輩をパシりに使うんだよ!! スゲーだろ」

「(幸村君以外に居るのね。そんな奴)
なんて名前なの?」

「…………忘れた」

(やっぱりこいつバカだわ)

「でも、柳先輩と幸村先輩と麗先輩と居て麗先輩の親友だって言ってた」

「………(無いとは思うけど)それ結城雪花 じゃない?」

「そうだよ!! そんな名前!!」

「赤也、アンタ多分大きな勘違いしてるわ」

「何をだよ!!」

「そのうち分かる」

「それより姉ちゃん雪花 先輩と知り合いなのかよ」

「部活の後輩」

「じゃあメアド知ってるよな。教えてくれ!!」

「教えて下さいお姉様くらい言えないの? というか言え」

「死んでも言わねー!!」

「じゃあ雪花 のメアドいらないのね」

「……教えて下さい…お姉様」

「よし。赤外線でいいわね」

(チクショウ!!)

その日、切原君は私へメールしてきて紫先輩の愚痴をずっと言っていたが、数日後それは私のケータイを勝手に見た紫先輩によってバレることになるという後日談つきである。


すごい先輩 了




[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!