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禍福は糾える縄の如し
なんでこうなった


春の麗らかな陽気が学年が1つ上がったことを意識させる。

「雪花 おはよう!! クラス替えの掲示見に行った?」

「まだだけど。朝から元気だね麗」

「新学期だし、新学年だし。テンション上がるよね」

「来年にはそんなこと言ってられなくなるよ」

これは一度経験したから言えることだ。みんな3年に上がる年の新学期は目が死んでた。そりゃ公立の中学に入ってる人は初めての受験だしね。
でも立海は附属で大学まであるしそうでもないのかな。

「ついに3年になっちゃったよ~!! 受験とか嫌だ!!」

そうでもないらしい。

「紫先輩今年は3年生ですもんね」

「そうなの!! 本当憂鬱。部活も引退しなきゃいけないしね」

そうか。先輩たちと一緒に部活できるのもあと少しか。

「切原!!」

「あれ? 泉田先生。どうしたんですか?」

泉田先生は我が新聞部の顧問だったりする。ちなみに27歳独身だ。

「早く新聞の原稿印刷しにいけ。間に合わなくなるぞ。刷ったら俺の机の上に置いてくれればいいから」

「はーい」

それで紫先輩は去っていったんだけど

「お前らも早く教室行けよ」

「まだクラス替えの掲示見てないよ!! 雪花 早く行こう!! じゃあ泉田先生さよなら!!」

「ああ、また後でな」

後? 今日部活あったっけ。


クラス掲示を見に行くと遅刻ギリギリの生徒がたくさんいた。

「私のクラスどこだろ?」

「あった!! 雪花 あたし達今年も一緒だよ!!」

「そうなの? どこのクラス?」

「反応薄っっっ!! E組だよ」

「へぇーE組……………げっ!! 私教室行きたくない」

「何言ってるの!! 早く行くよ!!」






なんでこうなった。

「クラス一緒で良かった」

ここまで一緒に来た麗に

「今年も同じクラスだな」

1年から引き続き柳君に

「1年間よろしくね雪花 」

幸村君まで同じクラス。本当になんでこうなった。

しかも全員席近いし!!

「全員席静かにしろ!! 2ーEの担任をすることになった泉田だ。知ってる奴も多いだろうが一応自己紹介しておく。俺は「泉田俐玖。27歳独身。185cm62kg。好きな物は苺嫌いな物はキムチ。好きな女性のタイプは「もういい柳」

「まだデータはありますが」

「本当に止めてくれ」

始業式早々先生を黙らせた柳君。この人の前で自己紹介をしようものならそれは自殺行為になることくらい知っておこうか先生。それとさっきの「後でな」ってこのことだったんだね。

「今日は始業式と実力テストがある。だから速やかに動けよ」

「始業式くらいゆっくりさせろよ」とか「学校側の鬼畜」とか言ってるけど何を言うか。私はこの時を待っていた。
そう、柳君に逆襲出来る日を!!

「先生、結城さんが怖いです」

「幸村頼んだ」

「雪花 、少し大人しくしようか」

「すいませんでしたぁぁぁ!!」

すいませんでした。ちょっとテンション上がってたんです。

「よし、じゃあ並べ。体育館で始業式だ」

体育館に行って校長の無駄に長いお話しや生徒会長の堅苦しい話を聞き終わると教室に戻ってテスト。

「柳君、今度は私が勝つ」

「そうはいかない」



「吉成さん、あの二人面白いんだけどいつもあんなことしてるの?」

「そうだよ。いつもどちらからともなく宣戦布告し始めるんだ。だいたい前回負けた方からし始めるんだけどね」

「そうなんだ」

「幸村君気になる?」

「ちょっとね」




「それではテストを開始して下さい」

問一 平安時代の文学作品を5つ書け。

えーと………源氏物語、枕草子、大和物語、狭衣物語、伊勢物語

これでいいかな。

問二 平安時代の文学者を5人書きなさい。

紫式部、清少納言、泉式部、紀貫之、菅原孝標の女……。

このテスト予想外だな。


……………


「終わり。回答用紙を回収して下さい」


「あー、やっと終わった!!」

「どうだった?」

「私全然書けなかった。問一とか二つくらいしか思いつかなかったし」

「なんか予想のななめ上くらいの問題を出してくるよね」

「古典の先生の問題は予想がしにくい。なかなかデータをとらせてもらえないからな」

「柳君でもそんなことあるんだね」

「当たり前だ。とったデータと正反対の動きをするやつもいる」

「へーそんな迷惑なのもいるんだ」

(その予想外の最たる例がお前だがな)

「で、雪花 。今回は柳に勝てそうなの?」

「どうかな?」

「珍しく弱気だね」

「いや、今回の問題は本当に予想外だったから本当に実力だけでやったから」

「じゃあ柳チャンスじゃん」

「俺も今回はどうなるか分からない」

「じゃあ五分五分だね」

「幸村君ナチュラルに話に入ってきたね」

「別にいいだろ。それとも何か問題あるのかい?」

「ないです」

「幸村君さすがだね。雪花 の扱い上手いよ」

「まあけっこう付き合いは長いからね。もう4年は経つかな?」

「そうだね」

「そのわりには雪花 って呼び方よそよそしいよね」

「そうだな。雪花 は人、特に男子には距離のある呼び方をする」

「癖みたいなものだから」

18年+13年ぶんの癖だからそうそう変えられない。

「でも吉成さんは名前で呼んでるよね」

「麗はそう呼べって言われたから」

「じゃあ俺も名前で呼んでよ」

「無理。初対面ならまだしもこれから呼び方矯正とか私には無理だから」

「君の頭は飾りかい?」

「揺らさないで下さい!!」

笑顔なのに脳みそぐちゃぐちゃになりそうなほど揺らしてるってどういうこと!?

「吐きそう…………」

ジェットコースター10回連続で乗ったってこんなにはならないと思う。

「名前で呼ぶのが無理ならあだ名は?」

「あだ名?」

そういう問題じゃないんだよ麗。

「幸村君ならゆっきーとかね」

「ゆっきー………」

なんかちょっと可愛いじゃないか。

「雪花 repeat after me ゆっきー」

なんで無駄に発音いいのよ。

「ゆ、ゆっきー………ってそういうことじゃないから却下!!」

「じゃあどういうこと?」

本気で分かってないのかこいつ。

「吉成さんてさ、本物のアホっぽいよね。なんとなく雪花 と友達なのも納得できるよ」

「精市、本物のアホっぽいではない。麗は本物のバカだ」

「バカとアホってどっちがましなの? というかバカって断定!? ねえ雪花 どうなの?」

「私に聞かれても…」

ごめん。私はこの人たちに逆らうほどの勇気なんぞ持ち合わせてないんだよ。それに柳君の言ってることは間違ってないしね。

「お前たちもう仲良くなったんだな。良かった良かった」

「泉田先生なんか用ですか?」

「担任としてのクラスの生徒とのふれあいだよ」

「先生どうしたの? 部活なんかほとんど口出さないのに。クラスは大事なんだね」

麗鋭い。ただの馬鹿じゃなかったんだね。

「部活はほら俺、マスコット的な?」

「ないだろう」

「ないだろうね」

「ないですね」

「ないよ」

「みんな酷くね!?」

「先生甘いです」

「結城目が遠くなってる!?」

「これくらい日常茶飯事ですよ」

「雪花 にとって日常茶飯事なんだ」

「すいません。なんでもありません」

ごめんなさい幸村君。調子のってすいませんでした。

「なんか雪花 見てると自分がいる位置がましに思えてくる…よし、雪花 カラオケ行こう。それでいろいろ爆発させよう!!」

速きこと風の如く、麗に引っ張られて教室を出る。まあ、あの中から出られて良かった。

絶対大変な1年になるだろうと確信した、そんな新学期。

翌日、麗が幸村君をゆっきーと呼んでいるところを目撃。予想以上に仲良くなっていた。


なんでこうなった 了









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あきゅろす。
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