一護
「随分と早いおかえりで」
「ああ、ギンには教えていなかったがこの部屋には少し仕掛けがしてあってね、織姫が出て行ったり誰かが中に入ればすぐにわかるんだよ」
ギンが舌打ちをしながら藍染を見れば、くっと笑って部屋の入り口に触れる。
「信用無ぇんだな、ギン」
「そうやねぇ」
一護がギンに向かってぼやけば、神経を張り詰め神鎗に手をかけながら答える。
「…しかし君は本当に興味深いね、黒崎一護くん。僕もそこまで詳しくは織姫の力を解明出来ていないのに、君は当たり前のように語った…何か理由があるのかな?」
「知っていたとしても、てめぇに教える気は更々ねぇよ」
ギンの殺気に破面が動こうとしたが、藍染はそれを制して一護を探るように見る。
同時に上げられた霊圧に一護の後ろに居る織姫が意識を失い、一護はそれを守るように膝をつき身体で織姫を隠し、肩越しで藍染に答えた。
「まぁ、それもそうだね。君は中々口が堅いようだから、織姫自体を調べるとしよう」
挑発的な一護の言葉に目を細め、藍染は一歩足を進める。
「させねぇ」
「一護ちゃん…」
近づく藍染にギンが立ち塞がろうとした時、一護の霊圧が急激に上昇する。
それが何を意味しているかを知っているギンだけが小さく、一護の身を案じて呟けば、一護は微笑んで大丈夫だと伝えるように頷く。
「霊王の加護のもとに」
「何?」
一護が言霊を紡ぎだし、織姫の身体が光りだす。
「封じられし全てを我は【一護】の名の元に制すると誓おう」
霊力が渦を巻き他者が近づく事を拒む。
「この身に在りし刃たる《月読》封じられし破壊たる《須佐之男》」
斬月が哭き、身一護は体が引き裂かれそうな痛みに耐える。
「成したらぬ弱さ故に少女に眠りし陰と光たる《天照》」
封じた力の覚醒と外から戻ってくる強大な力に、頬が切れ血が滴る。
身体の構造が変質していく痛みに意識が吹き飛びそうになるけれど、
「頑張り、一護」
後ろから添えられた手に、そして声に歯を食いしばる。
『《一護》』
優しい腕が、魂から離れていった。
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