季節シリーズ
23.
「こんなに早く清水さんに会えるとは思ってなかったから俺、緊張しちゃうよ」
食事会の当日、いつもより気を配ったような洋服を着た石川君が言った。
「そんなに緊張するような人じゃないよ」
「でもやっぱりいい印象をもって欲しいし。俺、上手く話せるかなぁ」
「普段の石川君でいいじゃないか」
「でもさぁ。ね、俺の恰好、変じゃない?」
「大丈夫だって。それ、朝から何回目だよ」
そんな会話をしながら店にむかって歩いていると後ろから声をかけられた。
「真妃」
振り向くと蒼介さんが片手をあげ近づいてきた。
「迷わずに来れたな」
「僕のこと、バカにしてるの?」
「違うって。こういう場所には来ないから心配してたんだよ」
「大丈夫、石川君と一緒に来たから」
“ね”と言いながら彼の方を見ると顔をうっすら染めているようだった。
「こ、こんばんは」
「こんばんは。何か予定があったんじゃない?大丈夫だった?」
「予定なんて・・・清水さんこそ大丈夫だったんですか?」
「俺が今日がいいって言ったんだよ。君とはゆっくり話してみたいと思ってたから」
いつかのように僕を抜きにして楽しそうに会話をする2人を見ているとポンと肩をたたかれる。
「真妃」
また振り向くと今度は大輝だった。
「迷わずに来れたか?」
「・・・・蒼介さんにも同じことを言われた・・・・」
「え?いや、真妃はこういう店には来ないし初めての場所だから心配で」
「それも言われた・・・・なんだよ、2人して・・・・」
もちろん2人とも普段、出歩かない僕の事を心配してくれているのは判っていたけど、ワザと膨れたように言ってみると
大輝は慌てたように「ゴメン」とか「そんなつもりで言ったんじゃない」とか言ってくる。
それが可笑しくてクスッと笑うと大輝はホッとしたような顔をして楽しそうに話をしている2人を見た。
「いい感じだな・・・よし、店に入るか」
「うん」
さりげなく肩を抱くようにして誘導してくれる大輝に連れられ僕は店に入った。
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