季節シリーズ
10
「俺は真妃が好きだ。付き合う時に言っただろ、俺は真妃を要らないなんて絶対、言わないって。
俺だって一緒に住めば嫌な面が真妃にばれちまうって思ったけど、そんな事どうでもいい。
俺はずっと真妃といるんだから早めにそういうところを見せて悪いところは直していけばいいって思ったんだ」
そう言うと再び、僕の目を覗き込むようにした。
「それとも真妃は俺とは一緒に居たくない?」
「そんなことない!」
「ならいいじゃないか」
大輝はそう言うと僕の大好きな優しい笑顔を見せながら言った。
「俺は真妃の両親や元彼とは違う。いらないなんて絶対に言わない」
「でも・・」
僕は嬉しいのにやっぱり勇気が出なくて大輝の申し入れを受けることが出来ない。
「まぁ、急にこんな事言われても困るかもしれないけど・・考えてくれないか」
僕は無言で頷くことしかできず彼の胸にしがみついた。
大輝から“一緒に住もう”と言われたことを蒼介さんに話した。
彼の言葉を嬉しく思う事、でもまた要らないと言われるんじゃないかと思ってしまい頷く事が出来ない事、そう思ったら
不安になってしまい1歩、踏み出す勇気が出ない事。
僕がポツポツと話すことを彼は黙って聞いてくれた後、ジッと僕の顔をみつめて言った。
「たしかにお前が1人で住んでいるっていうのはいろんな意味で危ないと思ってたしな・・・けど、お前が不安がる気持ちも判るつもりだ。
付き合う前もさんざん考えてOKしたんだろ?なら今回も焦らずゆっくり考えた方がいいと思うぞ。
俺はお前が傷つくのを見たくないからな」
「うん・・・」
「桐原も中途半端な気持ちで言った言葉じゃないと思う。それだけは判ってやれ」
「うん・・・」
「それにな、お前、桐原のことを信じるって決めたんだろ?」
「うん・・・」
彼の言葉に「うん」としか返さない僕の頭をぐしゃぐしゃにしながらもう1度、言った。
「焦らずに結論を出せよ」
僕は頭を庇いながらまた「うん」と返事をした。
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