季節シリーズ
7
最近、横になってもほとんど眠れなかったのにさすがに疲れていたのかいつもよりは多めに睡眠がとれたようで次の日は少しマシな気分で
目が覚めた。
ここから会社までは倍以上の時間がかかる。眠っている間も抱きしめたままだった写真立てを元の位置に戻し、手早く身支度を整える。
「じゃあ行ってきます」
彼の写真に挨拶をして家を出た。
引き継ぎをすすめたり1人暮らしに足りない物などを少しずつ揃えている間に1週間は過ぎ、今日は正式に会社を辞める日。
上司が最後まで引き留めてくれたのはどういう理由であれ嬉しかった。
送別会をしてくれるというのを断り駅に向かう。通勤定期を解約し携帯のショップに足をむける。
携帯を解約する直前に蒼介さんと拓未に“僕は大丈夫だから。心配しないで下さい。お二人ともお幸せに”とメールを送りすぐに
着否にする。
そのまま手続きをすませ新しい携帯を手に帰路についた。
「ただいま」
誰も返してくれるわけがないのに挨拶をする。これは1人になった高校時代から変わらない習慣。
“1人だからと言って話さなければ何も話していないっていう日が来るぞ。莫迦らしいと思うかもしれないが挨拶はしろよ”と
蒼介さんに言われ納得してからずっとしている。
今は写真の大輝に向けてしているようなものだ。
「大輝、今日で会社も終わったよ。携帯も解約したからもう誰からも連絡は来ない」
この1週間、大輝からは1度も連絡はなかった。僕からもかけなかった。
「これで貴方との繋がりは全部切れたね・・」
そう話しかけながら彼から貰った指輪をチェーンからはずし指につける。
「これだけは手放せなかった・・ごめんね、未練がましくて。でも思っているだけならいいよね?これから先、1人だけど
大輝のことを思いながらなら生きていけるから・・許してね」
いつの間にか流れ始めた涙を拭うことも忘れ写真を抱きしめる。
「大輝・・愛してるよ・・」
この夜はいつまでたっても涙が止まる事はなかった。
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