季節シリーズ
6
「あら、真妃ちゃん大きな荷物ね〜」
新居であるアパートに着くとちょうど大家さんが出てきた。
「今日は荷物を受けていただいてありがとうございました」
「いいのいいの。たいした事はしてないんだから」
僕がこのアパートに決めた理由の1つはこの大家さんの存在だ。
明るい人で初対面の時から気さくに声をかけてくれた。何回か来ているうちにいつの間にか
“染矢さん”が“真妃君”になり
“真妃ちゃん”になっていた。
「一応、真妃ちゃんが言ってたとおりに配置してもらったから。模様替えは1回まではタダでやってくれるって言ってたわよ」
「何から何まですみません」
「いいのよ〜。また、何かあれば言ってちょうだいね」
そう言い残すと手をヒラヒラと振りながら帰って行った。
僕はその背中にお礼を言って自分の部屋に向かった。
新しい部屋は2階の角部屋で1DK。先住者が退去し部屋のクリーニングなどが終わったばかりという事で清潔だったから即決した。
今までの家に比べるとかなり狭いが1人住まいだと丁度いい広さだ。
部屋に入り明日、会社に着ていくスーツを探し出しハンガーに掛ける。ついでに片づけをやりはじめてしまい気がつけば
日をまたぐ時間になっていた。
今日は溜まっていた有休をつかっての引越しだったけど明日は出勤しなければならない。
慌ててシャワーを浴び、寝る準備をする。持ってきたチェストの上に飾った大輝の写真を手に取りベッドに横になる。
「大輝、無事に仕事は終わった?僕は新しい部屋に引っ越したよ。あと1週間もすれば今の会社も辞める。そうすれば貴方との
接点もきれいに無くなる。貴方が帰ってくる頃には全てが終わってるから・・安心して・・」
写真の中の大輝は優しい笑顔だ。その笑顔に話しかけながら僕はいつの間にか眠っていた。
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