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季節シリーズ
49.


「お前が融通してくれないなら彼氏に融通してもらう」

こいつは何を言っているのだろう・・・・

そう思うのに身体も口も動かない。

「そいつもお前との周りに知られたくないだろうから俺の話を聞いてくれるんじゃないかと思ってな」

強烈なデ・ジャヴを感じ、元彼の言っている事が段々と耳に入ってくる。

「何を考えてるんだ」

やっと出た声は震えていなくてホッとする。

「だから金を融通して欲しいんだよ。どうせ貯め込んでるんだろ?そんなダサい眼鏡と服を身につけてるんだから」

「・・・・・いくら?」

鞄を握り締めながら聞く。“大輝に迷惑をかけられない”その思いでいっぱいだった。

「200万」

「判った」

一刻も早くこの場から去りたくて返事をする。

「用意できたらこの口座に振り込んでくれ」

そう言って差し出されたメモをひったくる様にして受け取り歩き出す。

「頼むわ」

あいつの言葉を背にうけて僕は足早にその場を去った。


翌日、昼休みに抜け出して銀行へ行く。指定された口座に振り込むとドッと力が抜けるような感覚になる。

昨日も拓未から連絡があった。その時によっぽど話そうかと思ったけどやっぱり迷惑をかけたく無くて止めた。

あの時、僕は心配する蒼介さんに“次はきちんと対応する”と言ったんだ。今回は僕1人でいい。
そんな思いからだった。


あいつが現れてから1ヶ月がたとうとした頃、また待ち伏せされた。

前回と同じように無視をして通り過ぎようとするが前に回り込まれてしまう。

「よぉ。また金を融通してくれねえかな」

「・・・・前に払っただろ」

「あれっぽっちで済むと思ってたのかよ」

そいつはフンと鼻で笑うとグッと顔を近づけてくる。僕は咄嗟に顔をそむけた。

「今度も200万でいい。明日、頼むぜ」

僕の顎に手をかけ無理やり自分の方にむかせて煙草臭い息を吹きかけるそいつを睨みつける。

「ククッ。そうやって睨みつける顔も可愛いじゃないか。彼氏を守りたかったから言う事を聞くんだな」

そう言って顎から手を離し、離した手をそのまま頬にあててくる。その手を強く払うと“パシッ”と音がした。

「痛えな。この痛みの慰謝料も貰うか。300万、振り込んでこいよ」

そう言いながら立ち去るあいつの背中を睨みつけていると後ろから声をかけられる。

「真妃?どうしたんだ?」

振り返ると蒼介さんだった。




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