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季節シリーズ
47.


「真妃ちゃん、ご無沙汰!元気にしてる?久しぶりに食事でも行かない?」

気分が落ち込んだまま何とか仕事には行くものの食欲は無く、帰宅して機械的に家事をこなす時間が過ぎていく中、拓未から連絡がきた。

正直、この時の僕は誰かと会うような事はしたくない気持ちが強く仕事が忙しいと断りをいれる。

「そうか〜残念。じゃあまた連絡するね」

あっさりと引いた拓未に少し意外な感じをうける。

卒業後、小学校の教師になった拓未は持ち前の人懐っこさで日々、頑張っていると聞いている。慣れない中、時間をとろうとしてくれた彼の
心遣いに感謝しつつもどうしてもそんな気にはなれなかった。

けれどそれから頻繁に連絡が来るようになり、断り続けるのも悪くてある晩、食事に行くことにした。

「ほんと、久しぶりだね〜」

以前は毎日、見ていた明るく可愛い顔で笑う拓未を見て久しぶりに穏やかな気持ちになる。

「拓未も元気そうで良かった。学校には慣れた?」

「う〜ん、まぁまぁってところかな。子供達は生意気だしね」

「そう言っても顔が笑ってるよ?」

「フフッ。何て言うか俺が担当させてもらってるのって2年生なんだけど“石川先生〜”って呼ばれると可愛くってさ」

「拓未、子供好きだもんね」

「うん。言う事を聞いてくれない子もいるけどそういう子にもしっかり向き合って話すようにしてるんだ」

目を輝かせながら話す拓未を眩しい思いで見つめる。忙しいながらも充実した生活を送っている様子の彼を羨ましく思う自分に気づいて思わず苦笑いを
浮かべてしまい拓未に不振がられてしまう。

「どうしたの?」

「ううん、何でも無い。それより拓未は学校でもその口調なの?」

「まさか。学校ではデスマス調だよ。子供達には一応それらしく話してる」

「そうなんだ」

他愛も無い話を続けていると何となく気がまぎれる。そんな事を考えながら話していた僕は拓未がたまにみせる心配そうな瞳に気づくことは無かった。


「じゃあまたね。今度は蒼介さんも来れると思うからまた一緒にご飯、食べよう」

「うん。蒼介さんに宜しくね」

食事を終えて店を出る。拓未の言葉に軽く頷いた僕は拓未が泣きそうな顔で見送っていることに気づかず誰もいない家へと足をむけた。

それから頻繁に連絡がくるようになった。拓未だけではなく蒼介さんまで。

「なにかあればすぐに言えよ」

何度目かの誘いの後に3人で食事をした時にそう蒼介さんに言われた時は嬉しいと思うのに「ありがとう」の言葉が出てこず
ただ無言で頷くだけだった。




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