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季節シリーズ
46.


食事が終わり後片付けをしている僕に思い出したように大輝が言ってきた。

「あぁ、そうだ。今度、誠(せい)さんと一緒に仕事をすることになったんだ」

誠さんとは大輝の大学時代の先輩で大輝に“一緒に仕事がしたい”と言ってくれた人で後藤誠(ごとうせい)という。

「そうなんだ。蒼介さんの耳にも入ってるのかな」

ちなみに後藤さんは蒼介さんの高校時代からの友人でもある。同じ高校ではなかったから僕はほとんど会ったことは無いけど拓未も交えて今でも
交流は続いているらしい。

「たぶん知ってるだろうな。ある意味、やりにくいけどそんな事、言ってられないしな」

「そうだね。でも無理はしないでね?」

「判ってる。真妃に心配をかけるようなことはしないから」

そう言って笑う大輝を僕は何故か嫌な予感が胸をよぎり、それに伴って湧いてきた戸惑いを隠した眼で見つめた。


それから容赦なく時間は過ぎ、やがて大輝は眠るために帰るだけといった生活になり僕と彼は辛うじて朝だけ顔を合わせるという日々が続き、それでも
僕は彼がいつ帰ってきてもいいようにしていて、朝、顔を合わせた時に大輝から謝罪の言葉を聞くことが多くなっていた。

「前にも言ったが無理に待っていなくていい」

ある朝、大輝にそう言われた時、僕は笑顔を作った。

「大丈夫だよ。僕より大輝の方が心配だよ」

「俺は大丈夫だから。じゃあ行ってくる」

「気をつけて。行ってらっしゃい」

笑顔を貼りつけた僕の顔を碌に見ることも無く、以前の誕生日に贈った腕時計を見ながら慌ただしく出ていく彼の背中を見送り僕はその場に力なく座りこんだ。

「・・・・・今日が休みで良かった・・・・・」

もう、前みたいにジッと見つめても何も話してくれない。

それどころか朝に顔を会わせることすら少なくなっているのに・・・・・


そんな日々が続いていた時だった。彼に言われたのは。

「待たなくていい。待たせていると思うと気になって落ち着いて仕事が出来ない」

イラついたようにそう言われた時はいつものように笑顔を作ることができず、ただ頷くことしか出来なかった。

僕はきっと酷いことになっているであろう顔を大輝に見せたく無くてすぐに自室へと戻った。


それから大輝の顔を見ることが殆ど無くなり、洗面所に出された洗濯物だけが彼がこの家に帰ってはきていることの証明だった。

ある日、彼のシャツを洗濯しようとした時、フワッと香水の匂いがしてその時は打ち合わせか何かで匂いが移ったのかと思った。

けどそれが2度3度と続き、カッターの襟についた口紅の痕を見てかなりショックを受ける。

・・・・・僕は流れる涙を止めることができなかった・・・・・




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あきゅろす。
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