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季節シリーズ
45.


おかげで大輝より先に帰ることができ、食事の準備などができる。忙しい彼が少しでも寛げるよう部屋の環境を整えることに僕は心を傾けた。


大輝は無事、希望していた部署に配属になった。正式に決まったことで彼も張り合いが出たと言って仕事に夢中になりどんどん帰宅が遅くなっていく。

だけど僕は大輝がどんなに遅く帰ってきても起きて待っていた。これは彼が大学時代にバイトを始めた時からの習慣だったから。

「別に待ってなくていいぞ」

ある晩、帰宅した大輝が玄関まで出迎えに行った僕にいきなり言った。

「いいんだ。僕が大輝に“お帰りなさい”を言いたくて待ってるんだから」

「そうか。けど身体が辛い時は無理しなくていいんだからな」

「うん。ありがとう」

そんな短い会話を終え、大輝は入浴にむかい僕はその背中に“おやすみ”と声をかけ自室に戻る。

「だって僕が待っていないとまともに話せる時間が無いじゃないか・・・・」

ベッドに横になり扉の外の気配を窺いながらポツッと呟く。

もう何日、いや何カ月、大輝の熱を感じていないだろう・・・・

僕は元々淡白なのか自分で処理をしなくても平気だった。反対に大輝は精力的というか大学受験の時を除いて、2人の仲が順調にいっている時は長く空いても
2週間だった。

「2人が順調にいってる時はって・・・・・」

自分が考えた事に自分でつっこむ。

僕は僕達が順調では無いと感じているのだろうか・・・・・

考え出したらどんどん嫌な方へ思考がいくような気がして慌てて考えるのを止める。

「でも最近、キスもしない日があるよね・・・・・」

また、ポツッと口から出た言うつもりのなかった言葉に自分で驚く。

これ以上、考えなくて済むように僕はギュッと目を閉じた。


「真妃の飯、久しぶりだな」

「そうだね」

“最近はお弁当も持って行かないから・・・・”せっかくの食事を楽しみたくてそんな言葉は心の中で呟く。

「ちゃんと食べてるの?」

「ああ」

「好きな物ばかり食べたら駄目だよ?」

「判ってる。ちゃんと野菜から食べるようにしてる」

「ならいいけど・・・・」

会議が早く終わったと言って珍しく大輝が早い時間に帰宅した夜、僕が作った食事を食べながらそんな話をする。

どんな些細な事でも今の僕にはとても嬉しく感じ、さっき心の中で呟いた言葉は忘れたふりをした。




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