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季節シリーズ
44.


涙を堪える為、黙ってしまった僕を心配そうに見る大輝。

そんな彼を心から“愛している”と思う。

「ううん、何でも無い。ねえ早く帰ろう」

「え?飯は?」

突然の言葉に驚いたような大輝の腕を人目も気にせず引き歩き出す僕におとなしく従いながら問いかけてくる。

「家に何かあると思うから。早く2人きりになりたいんだ」

その言葉を聞き、今度は大輝が前に立ち僕を引っ張る。

「真妃がそんなふうに言ってくれることは滅多に無いからな。気が変わらないうちにさっさと帰るぞ」

それこそ人目も気にせずズンズンと速足で歩く大輝に僕は小走りでついていく。

通り過ぎる人達の中には振り返って見ている人もいるようだったけれどそんな事も気にならないくらい嬉しい気持ちがドンドン湧いてくる。

家に着き玄関に入るなり大輝にドアに押し付けられ激しくキスをされ、そのまま縺れるようにリビングにむかう。

キスをしたまま、互いの服を脱がせあいそのままソファで何度も抱かれた。

夢中で互いの名前を呼び合いながら何度も果て、ようやく終わりを告げたのは大輝のお腹が盛大に鳴ったからだった。

「プッ!」

「ククク・・・・」

急に我に返ると何だか可笑しくなり2人で大笑いをする。ひとしきり笑った後、ご飯を作るため立ち上がろうとしたけど無理で入浴も大輝とするはめになってしまい
結局、その日はデリバリーのご飯になった。


入社式の後、落ち着く間もなく大輝は本格的な新人研修に入った。

いつか言っていたように研修で色々な部署を回っているせいか帰宅してもその部署のレポートだとか翌日の下調べなどで思っていた以上に忙しくしている。

僕が就職したのは大手電機メーカーの子会社で電気部品を製造する会社だった。そこで新たな部品の開発研究をする部署に配属になる。

そこは少人数で研究を行っていてチームで開発をしている人、個人で研究をしている人などがいる中で僕は何故か女性ばかりのチームに入れられ、
その人達と女性用美容製品の開発研究をすることになった。

あとから何故、僕がそのチームに入れられたのか聞いてみると“おじさんの意見もいいけど若い男性から見た意見が欲しかったから”と言われてしまい
まさか女性には興味が無いことを言えるわけも無く、“役に立たないかもしれない”という事だけは伝えて笑ってその場をやり過ごした。

ただ、その職場の良いところは残業がほとんど無いことだった。




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あきゅろす。
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