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季節シリーズ
43.


「いきなりお声掛けしてしまい申し訳ありません。少し、宜しいでしょうか?」

店員は男性だったが柔らかい印象の人で申し訳なさそうに聞いてくる。

大輝が僕をみたから“僕はいいよ”という意味で頷くと彼は店員に向いた。

「何でしょうか」

「実は妹様よりお取り寄せの依頼のあったブレスレットが入荷したことをおつたえしようと、何度かご連絡したのですが繋がらないものですから何かあったのかと
 思いまして。今日も連絡がつかないようでしたら桐原様にお電話をさしあげようと思っていました」

「あ〜それは申し訳ありません。あいつ、今、旅行に行ってるんです。きっと遊びに夢中になって気がついてないんだと思います」

「そうですか。それなら良かったです」

その店員は明らかにホッとしたような様子をみせると今度は笑顔をみせる。

「では改めて連絡はさせていただきます。呼びとめてしまい申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げ、もう1度笑顔をみせると店に戻っていく店員の後ろ姿を見送りながら少し気になったことを大輝に聞いてみる。

「里奈ちゃんと一緒にジュエリーショップに行ったの?」

「え?」

僕はもしかして大輝があの店に行ったのは奈津美さんや里奈ちゃんに何かを買ってあげる為だったのかという意味でそう問いかけたのだけれど大輝の反応は
明らかに変だった。

「大輝?」

「あ〜〜〜いや、付き添いとかそういうわけではなかったんだけどな・・・・」

鼻の頭を指先でかく時は言おうか言うまいか迷っている時の大輝の癖だ。その癖が今、出ている。

「大輝」

そういう時はジッと見つめると大抵、話してくれるのは何年もの付き合いの中で判ったことの1つだ。

今回も名前を呼んでジッと見つめると観念したように苦笑いをうかべ答えをくれた。

「真妃に渡した指輪、実は里奈に相談したんだ。そしたらいい店を知ってるっていうから紹介してもらって。俺は1人でデザインを決めたかったのにあいつ、
 横からなんだかんだと口を出してくるから店の中で喧嘩になりそうになったんだ。そのせいで俺まで覚えられたみたいなんだよ」

思っていなかった意外な事実を知らされ驚く。基本、自分の事は自分で決めてしまう所がある大輝にとって相談、しかも妹の里奈ちゃんに相談するなんて
ことは僕が知っている限り今まで無かったからだ。

そんな彼を知っていたから・・・・知っていると思っていたからその時の僕は驚くと同時にそこまでして贈ってくれた指輪がかけがえのない物になって
いくのを感じ泣きそうになってしまう。

「真妃?どうした?」





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あきゅろす。
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