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季節シリーズ
42.



「大輝?何処に行くの?」

「風呂の準備をしてくるついでにタオルを濡らしてくる。お前、顔を冷やさないと明日は外出できないぞ」

僕の問いに笑みを浮かべて答えると大輝は浴室にむかう。

その背中を見ながら僕は幸せな感情の中に浸った。


やがて戻ってきた大輝の手には冷たいタオルが握られていて、それで顔を冷やしている間に彼にスーツを脱がされ、同じく服を脱いだ大輝に
横抱きにされたまま浴室に連れていかれた。

そしてそこで1度抱かれ、ベッドルームに入ってからは記憶が曖昧になるくらい抱かれ最後はどうやら飛んでしまったらしい。

気がつくと心配そうに僕を覗き込む大輝と目が合い「このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思った」と言われてしまった。

「大丈夫だよ。心配かけちゃってごめん」と言うとホッとしたように僕を抱え込んで眠ってしまった彼の寝顔を見ながら僕は幸せを噛みしめた。



本当に幸せだった。



「また指輪をみてる・・・・・」

呆れたような拓未の声でフと我に返る。

「そうだった?」

「・・・・・自覚ないの?」

眼差しにも呆れを滲ませた拓未に“へへっ”と笑って見せる。

「真妃ちゃん。その笑い方、キャラじゃないから」

「ごめん」

即座につっこまれ素直に謝ると2人で顔を見合わせ同時に“プッ”っと吹き出す。

「まぁ、気持ちは判るけどね」

そう言って拓未は自分の左手にはめられている指輪に視線を送る。

その指輪は2人が付き合いはじめて半年目に蒼介さんが拓未に贈ったものだ。本当に嬉しそうに拓未が指輪を見ていたのを思い出す。

僕もあの時の拓未のように嬉しそうな顔をしているのだろうか。

そんな事を思う僕はたしかに幸せを感じていた。


それからあっという間に卒業を迎え、明日はいよいよ入社式という前日、以前、拓未に連れて行ってもらったショップに大輝とともに向かった。

なんだかんだ言っても大輝も拓未のセンスの良さは認めている。だからそこでネクタイなど必要となる小物などを購入することになったのだ。

会計をすませ店を出て「何か食べて帰ろうか」などと話しながら歩いているとジュエリーショップの前を通りがかる。

「桐原様」

ショップを通り過ぎるかどうかという所で店員が慌てたように大輝に声をかけてきた。





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あきゅろす。
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