季節シリーズ
5
鍵をポストに落とし、箱を抱えたまま駅に向かう。
引越し先は出ていくと決めてからすぐに探した。条件さえ拘らなかったら案外すんなりと決まった。
会社は辞表を出してある。引き継ぎとかあるからすぐに辞める事はできなかったけどそれもあと1週間もあれば終わる。
そんな事を考えながら歩いていたはずが気がつけば引越先に向かう電車に乗っていた。
「サラリーマンの性って恐ろしい・・」
無意識の行動に自分で呆れるやら可笑しいやらでつい言葉がもれた。
携帯の解約は全てが終わってからすることにしている。
そういえば蒼介さんと拓未には一言、言っておいた方がいいかなとも思ったけど止めた。
あの2人は数少ない友人達だけど出来るだけ僕が居なくなった事を知る人は少ない方がいい。
でも心配してくれるだろうから携帯を解約する前に“心配しないで。大丈夫だから”とだけメールをしておこう。
仕事先も決めた。昼は花屋で、夜は近くのBarでウェイターをする。
貯金はあるけどこれから1人で生きていかなくてはいけないのだから働ける時にしっかり働いておかなければいざという時に
困ってしまう。
なるべくなら人様に迷惑がかからないように生きていかなければならないのだから。
そんな事をつらつらと考えている間に電車は目的地に滑り込んだ。
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