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季節シリーズ
38.



ある日、僕はゼミの教授に呼び出された。

「染矢君、もう就職は決まったかい?」

この教授はあまり深く学生達と関わろうとしない人だから僕も気楽に接することが出来る貴重な人だ。

「いえ、まだです」

だから教授が珍しくそんな事を聞いてきたから驚きながらも答える。

「そうか。実は私の友人が優秀な人材を欲しがっていてね」

教授の話によれば、その友人は大きくはないけれどそれなりの規模の電子部品を開発・作成している会社を経営しているらしい。

「染矢君は院には進まないと聞いたもんだからね。もし君が良ければ一度、話だけでも聞いてみたらどうかと思ってね」

「ありがとうございます。一度、会社にお伺いします」

「そうしてくれるか。友人には私の方から連絡を入れておくから」

「はい、判りました」

それからトントン拍子に話が進み、僕の就職が決まった。


大輝はというと、いくつかの会社の試験を受けたものの最終的に大手商社に就職が決まった。

「3ヶ月はいろんな部署を回って大体の流れを掴んでから希望を出すらしいんだ。その希望が叶えられるとは限らないけどな」

互いの就職も無事に決まり、久しぶりに・・・・本当に久しぶりに一緒に食事をとることができ、やっとお互いの会社のことを話せる時間ができた。

「大輝は企画部に行きたいんだよね」

「あぁ」

彼は大学でマーケティングなどを学んでいて、大輝が働くことになる会社の企画部であれば大学で学んだことを存分に発揮できると言っていた。

それにその部署には可愛がってもらった大学のOBがいるらしく“一緒に仕事が出来たらいいな”と言ってもらったらしい。

「大輝ならきっと希望の部署にいけるよ」

「真妃にそう言ってもらうとマジで叶うような気がする」

そう言って笑った大輝は急に僕をその腕の中に引き寄せると互いの額をあわせて言った。

「真妃、寂しい思いをさせてごめんな」

突然の謝罪に僕は驚く。

「どうしたの?突然」

「俺がバイトを始めてから何ていうか・・・・たまにしか2人でゆっくりする時間が取れなかっただろ」

「たしかにそうだけど、大輝が2人の時間を取る努力をしてくれてたのは判ってるよ?僕はその気持ちだけで嬉しいから」

「けど・・・・」

「それに大輝に教えて欲しいっていう生徒さんが沢山いるっていうのは僕も嬉しかったし」

「?」

不思議そうな顔の大輝の頬に“チュッ”とわざと音を立てるようにキスをして赤くなったであろう顔を隠すようにその首筋に顔を埋める。

「だってそれだけ大輝が頼られているっていう事でしょ。頼りないって思われるより良いし、僕の恋人はとっても優秀なんだよって言いふらしたいくらい」

「ハァ〜。お前な・・・・・」

大きな溜息とともにギュッと抱きしめられた力が強すぎて思わず“ウッ”と声を漏らすとすぐにその力が緩まる。

「ごめん。お前が可愛いことをするし言うからつい・・・・ハァ、抑えられなくなる前に言っとくか」

そう言って彼は僕を囲っていた腕を外し、そのまま僕の肩に手を置き再び額をあわせた。

「真妃、今度の土日の予定は?」





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あきゅろす。
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