季節シリーズ
33.
結局その日の食事はキャンセルし僕は家まで送ってもらった。
「真妃、食べられる気分じゃないとは思うがちゃんと食事を・・・・何でもいいから口にいれろよ」
「ありがとう、判ってる。蒼介さんも僕の話を石川君にしてね」
「あぁ」
「・・・・・染矢君、また明日ね」
“また明日”と声をかけてくれた石川君にはただ笑顔だけを返し僕はマンションのエントランスに向かう。
2人は心配してくれたけど食事をする気分にはなれない。
家に戻り気分をスッキリさせたくてシャワーを浴びた後、濡れた髪をタオルで拭きながら水だけを持ってソファに座る。
「ハァ〜」
思わず溜息をつき、背もたれに身体を預けると僕は目を瞑った。
「真妃、真妃」
遠くで大輝の声がする。
「真妃、起きれるか?」
夢うつつの中で聞く大輝の声は酷く優しい。
そんな事を思っていると身体が浮いたような気がして自分を支えてくれる腕に身を任せ、逞しい胸に擦り寄る。
そのまま、何処かに運ばれているような気がしたけど僕は目を開けることも意識を覚醒させることもできなかった。
目覚ましの音で目が覚めた。
僕は目覚まし時計が無くても起きれるが大輝は起きれない。だからこの家の目覚まし時計は大輝の部屋にしか無い。
なのに目覚ましの音が聞こえるのは何故なんだろう?
そんな事をぼんやりと考えていると隣から声をかけられた。
「真妃、おはよう。大丈夫か?すまない、目覚ましのセットを解除するのを忘れてた」
「え?大輝?僕、どうして・・・・?」
「昨夜、俺が帰ってきたらお前がソファで寝ててさ。風呂に入る前に1度、起こしたんだけど出てきてもそのままだったからこっちに連れてきた」
少し、心配そうに僕を見る大輝の話を聞いて僕は慌てて起き上がろうとした。
「ごめん!疲れているのにゆっくり眠れなかったよね。すぐに自分の部屋に戻るから。あっ、それよりご飯の準備をしないと」
「それはいいから。そんな事よりお前、大丈夫か?」
「え!?何が?」
僕の身体を再びベッドに戻し、そのまま自分の腕の中に囲う様にする大輝に戸惑いながら彼の言葉に反応する。
「普段なら髪とかキチンと乾かすのにそのままみたいだったし、起こしても起きないなんて初めてだったし。
体調でも悪いのか?」
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