季節シリーズ
25.
「真妃は無意識なんだろうけど桐原の皿にこいつが好きそうな物を選んでよそってて、桐原はそれが当然のように文句も言わず、バクバク食ってる」
「そうそう。それに何気にアイコンタクトもしてるし。見る人が見れば判るような雰囲気だよ?」
蒼介さんだけでなく石川君にまでそんな事を言われてしまい、僕は顔が熱くなる。
「俺、だいぶ染矢君の事、判ってきてたつもりだったけどまだまだだったんだな〜。桐原君と一緒に居る染矢君って凄く綺麗」
石川君のその言葉に、大輝は大きく頷きながら言った。
「だろ?真妃は美人だから俺が気がつかないうちに変な虫が寄ってこないか心配なんだよな・・・・」
「染矢君は普段、大学では眼鏡と前髪で顔を隠しているから心配はないと思うけど?」
「でもなぁ・・・・」
「俺がちゃんと見ててあげるから」
「そうか?あっ、でも真妃を見張ってるみたいになるな・・・・」
「なら今、真妃から了承をもらえばいいじゃないか」
僕の事なのに肝心の本人を無視するように進む会話の内容に唖然としていると、笑いを堪えるような声で蒼介さんまでその会話に口を出し始める。
「そうですよね。ねぇ、染矢君。桐原君も別に見張るつもりで言ってるんじゃないと思うし、いいよね?」
石川君の口調には否を言えるような雰囲気は無くて僕は首を縦に振る。
「それで大輝が安心するなら僕はいいけど・・・・石川君、なんでそんなに大輝に協力的なの?」
「だって染矢君、初めから桐原君のことを気にかけてるし、桐原君も染矢君の事を愛おしそうに見てるし、そんな2人をみてたら
俺も何か手助け?してあげたいなって」
「そう・・・・」
彼の言葉にその日、何度目かの苦笑いがうかんだ。
結論からいえば食事会は無事に終わった。
途中で何だか色々とあったけどそのおかげなのか、大輝と石川君も仲良くなった。
蒼介さんと石川君は2人で帰っていき、僕は久しぶりに大輝と出掛けられたことでいつになく浮かれていたのだろう。
とても幸せな気分になっていて家までの距離を大輝の片腕に身体を預けるようにして歩いた。
大輝も嫌がることも無く、それどころか肩を抱くようにしてくれたり終始、機嫌が良さそうに笑顔だった。
だから・・・・
この幸福がずっと続くと思ってしまったんだ・・・・
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