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季節シリーズ



大輝が出張に行く前日のご飯は彼の好物ばかりを作った。

「なんか・・豪勢だな」

出張に備えてか久しぶりに大輝が家でご飯を食べると言うので作ったのだ。

「しばらく外食ばかりになるだろ?だからだよ」

心内を悟られないよう精一杯の笑顔で応える。

「あぁ、確かにな」

一言だけ返してくる言葉にさらに笑顔を貼りつける。

「さ、冷めないうちに食べよう」

“いただきます”と手をあわせ食べ始める大輝。

あぁ、こういう風にきちんと挨拶をするところも好きだなぁ。

そんなことを考えながら僕も箸を持った。

「味はどう?薄くない?」

「大丈夫だ」

「良かった」

大輝は綺麗な食べ方をする。何気ない事なのかも知れないけどそんなところも好きだった。

時折、短い会話をしながら食べ進めるとあっという間に食事は終わった。
僕はほとんど食べられなかったけど大輝が気づく事はなかった。けれど、

「ごちそうさま。美味かった」

席を立つ時、そう言って見せてくれた顔は久しぶりに見る笑顔だった。

「おそまつさま」

また笑顔を貼りつけ、食器を運ぼうとする大輝を止める。

「いいよ、後は僕がやっておくから。明日の準備があるんだろ?」

以前までは出張の準備は僕がやっていたけど今回は自分でやると言っていた。多分、仕事用の服の他にオシャレな私服を
持っていくのを見られたくないんだろうと思う。

「あぁ、悪いな」

そう言いながら部屋に戻る彼の背中を見ていると立ち止まった。

「?」

不思議に思ったらすぐに聴こえてきた言葉。

「明日は早いから。お前が寝てる間に出るから見送りはいい」

振り向かないまま告げられた言葉にグッと唇をかみしめてから答えた。

「判った。気をつけて」

「あぁ」

やはり一言だけ言い残し自分の部屋へと入っていく背中をジッと見つめる。

忘れないように・・しっかりと目に焼き付けるように・・・




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