季節シリーズ
20.
「それは彼しか大学では親しくしていないから」
「うん、判ってる。判ってるんだけどな」
初めは大輝が何でそんな事を言い出したのか不思議だったが、自分に当てはめて考えると解る。
同棲を始めたものの大学が別なせいで、僕は前より一緒にいる時間が減ったような気がしていた。
高校時代はクラスが一緒だったこともあってほぼ毎日、長い時間を一緒にいたから。
大輝は大学でもすぐに新しい友人もでき、高校時代と同じように人の輪の中心にいるようだった。
何度か彼の友人達に会わせようとしてくれたけど、大輝に気を遣わせたくなくて断った。なのに飲み会なんかで遅くなる日が
あると寂しかったり不安になったり・・・・
“自分から会うのを断ったくせに”と思うと大輝には何も言えなくて、悶々としていた時に蒼介さんから電話をもらった。
『桐原が心配している』
「え?」
『最近、真妃が元気が無いってな。どうした?』
“大輝が心配してくれている”という事が嬉しくて下降気味だった気分はいくらか上昇したものの蒼介さんの優しい言葉に
つい、自分が思っている事を話してしまった。
『へぇ〜、桐原の言うとおりだったな』
「何が?」
『いや。あいつ、真妃が自分に気を遣って思ってることを言ってくれないってさ。これからは俺から真妃に大学での自分の事を
教えてやって欲しいって言われたんだよ』
「・・・・でも、そんな事をしたら僕が蒼介さんを使って大輝を見張ってるみたいじゃない」
『俺もそう言ったんだけどな。それでもいいんだと。真妃を不安にさせるくらいなら俺が見たままの自分を真妃に伝えてくれって』
「・・・・・僕、そんな姿、見せてるつもりなかったのに・・・・」
『いいじゃないか、本人がいいって言ってるんだから。ちなみにあいつ、ちゃんと“俺には同棲している恋人がいる”って
公言してたぞ』
「うそ・・・」
『ホント。同じゼミの女に言い寄られてハッキリ言ったのが流れたらしい。俺も1度、断ってるの見かけたしな』
“だから安心しろ”と言う蒼介さんの言葉を聞いて心が軽くなったんだった・・・
僕が大輝の腕の中でその事を思い出していると上から「真妃?」と呼ばれた。
「そうだね。僕がどんなふうに大学で過ごしているか、大輝には判らないこともあるから心配になっちゃうよね。
そうと決まれば予定を組まなくちゃ。大輝はいつがいい?」
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