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季節シリーズ



大輝と僕は高校の同級生だった。

同棲するにあたって家具は僕の部屋の物以外は大輝が買い換えると言い出した。

理由を聞くと「真妃が悲しい思いをした時にあった物は真妃の目に入れたくない。これからは俺と新しい人生を歩くんだから新しい物を買おう」
と言ってくれた。

僕はその言葉が嬉しくて家具は全部大輝に選んでもらった。彼はしきりに「一緒に選ぼう」と言ってくれたが僕みたいな人間と
一緒に暮らしてくれることが嬉しくて、せめて大輝が気にいった物に囲まれて過ごせるようにして欲しいと言ったら複雑な顔をしながら
しぶしぶ頷いてくれた。

今思えば、心の中でいつ捨てられてもいいようにしていたのかもしれない。



その時は間もなく訪れた。

大輝が1週間後に出張に行く事になったと言ってきた。

期間は2週間。支店を回るのだと言う。

でも本当の出張期間は10日ほど。最後のほうは有休をとって彼女と旅行に行くらしい。

大輝の部屋にパンフレットが置いてあったのを見てしまった。普段は勝手に入るようなことはしないのだが自分のパソコンが不調で
仕方なく大輝の了承を取った上で部屋に入らせてもらった。

きっと彼はパンフレットの存在を忘れていたんだろう。

無造作に置かれたそれは彼のパソコンのすぐ側にあったのだから。

行先はいつか時間がとれたら2人で行こうと約束していた場所。

ここでも約束を破られたのか・・と悲しくなりふと思いついた。

彼は僕と約束をしたつもりは無かったのではないか。あの時の会話は彼にとってはただの戯言で本気にしていたのは僕だけだったのではないか。
だって彼女と旅行に行っている最終日は僕の誕生日だ。そのことすら今の大輝にはどうでもいいことなのだ。

そう思った時、決めた。

大輝がいない間に出て行こう。別れを告げられるのは辛すぎるし泣き縋ってしまいそうだから。

そう決めたら何となく落ち着いた。

これからの事を考えないと。




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あきゅろす。
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