季節シリーズ
6 END
仕事を終え、帰宅するとやたら豪勢な食事が並んでいた。
「なんか・・豪勢だな」
不思議に思い聞くともなしに呟くと
「しばらく外食ばかりになるだろ?だからだよ」
と返事が返ってきた。
「あぁ、確かにな」
「さ、冷めないうちに食べよう」
真妃の言葉に「いただきます」と挨拶をして食べ始め、時折、会話をしたように思うが何を話したのか覚えていない。
食事が終わり、食器を運ぼうとすると真妃から声がかかる。
「いいよ、後は僕がやっておくから。明日の準備があるんだろ?」
その言葉に甘え部屋に戻る途中、思い出したことを真妃に告げた。
「明日は早いから。お前が寝てる間に出るから見送りはいい」
振り向かないまま告げた言葉に真妃は何を思ったのだろう。
「判った。気をつけて」
「あぁ」
それが最後の会話になるとも思わずに真妃の顔を見ないまま部屋に入った俺は出張の準備をした。
座り込んだまま、今までのことを思い出しているとクシャミが出た。髪も乾かさないまま長時間、いたから身体も冷えてしまった。
明日は報告書をあげたりしないといけない為、会社を休むわけにはいかない。そうでなくとも無駄な有休を使ってしまっている。
頭では判っているのに身体が動かない。
“もう、またそんな恰好でウロウロして風邪をひいたら困るのは大輝だろ。ほら、ちゃんと髪を乾かして”
そんな真妃の言葉が蘇り、後悔に押しつぶされそうになりながらノロノロと立ち上がる。
「真妃・・・」
呼んでも返事も柔らかな笑顔も無い事に恐怖を感じる。
「真妃・・真妃・・・真妃・・・・」
それでも呼ばずにはいられず何度も名前を呼ぶ。
「真妃・・」
あいつの部屋に入り壁に凭れズルズルと座り込みまた名前を呼ぶ。
「真妃・・」
俺はそのまま涙を流し続けることしか出来なかった。
END
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