季節シリーズ
5
だんだん仕事も任されるようになり忙しさも増していくと同時に真妃と過ごす時間が少しずつ減っていった。
「待たなくていい。待たせていると思うと気になって落ち着いて仕事ができない」
せっかく待っていてくれた真妃に対してそんな言葉を吐いた事もあった。
真妃は固い表情になり黙って頷くと自室に戻り、そんなあいつの背中を見てなんともいえない気持ちになった。
それでも俺は真妃に対して謝ることも優しくすることも出来ずが時間が過ぎていった。
そんな日々が続いて大きなプロジェクトを抱えていた時、職場の先輩に無理やり連れていかれた合コン。
そこでやたらとしつこい女につかまりやがて身体の関係をもった。
女を抱いて帰った夜はさすがにあいつの顔をまともに見れず避けるように自分の部屋に戻り、そんなことを繰り返しているうちに
真妃と過ごす時間がほとんど無くなっていたことに気づかなかった。
そんな時に出張に行く事になった。女との食事の時に何気なくその話をすると目を輝かせて自分も行きたいと言い出した。
はじめは断ったがしつこく強請られ、やはり面倒くさくなって了承すると女は嬉々として計画を練り始め、次に会った時には
パンフレットを渡してきた。
その時の俺は行き先が真妃と行こうと約束した場所だということを忘れていた。
いつもは真妃にしてもらう出張の準備も今回は自分でやった。
心のどこかで疚しい気持ちがあったのだろう。
そんな俺は旅行の最終日が真妃の誕生日だったことも忘れていた。
真妃が姿を消して俺の世界から色が消えた。
今更ながらに自分がやったことに後悔の念がおそってくる。
“そういえば・・・”
出張の前日に真妃が作ってくれた食事を思い出す。
準備のため、その日は早めに帰宅する予定だった。
「今日は家でご飯を食べる?」
朝、最近は聞いてこなかった質問をしてきた。
「あぁ」
「判った」
会話とも言えないやり取りをして俺は先に家を出た。
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