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季節シリーズ



俺と真妃は高校の同級生だった。

いつもは全然、目立たなかったが顔を隠すように伸ばされた前髪が風でふわりと浮いた時に見えた顔はひどく儚げで綺麗だった。

周りを窺うとそれに気づいたのは俺だけだったようで何故か優越感を感じた。その時はそれだけだったがその表情は脳裏に残った。


『染矢って教え方が上手い』

そんな言葉が耳を掠めた。その言葉を発したクラスメートは満足そうにしていた。

「なに?染矢に勉強を教わったのか?」

いきなり俺にそんな言葉をかけられたそいつは驚いた顔をしながらも頷きながら答えた。

「あぁ。数学でどうしても解らないところがあって教師に聞いてもよく解らなかったんだよ。で、恥をしのんで染矢に聞いたら
 凄く解り易く教えてくれてさ。さすが、首席だよな〜」

俺達の学校は県内でも有数の進学校で授業の進み具合も定期試験の難しさも半端ない。その中で首席と言うのはかなりの努力を
しているということだ。

「ふぅん、なら俺も教えてもらおうかな」

何気なさを装ってそう言うとクラスメートは「そうすれば」と言って自分達の会話へと戻る。

俺はそっと染矢の方を見ると彼はぼんやりと窓の外を眺めていた。


次の日、あいつが1人の時を狙って「勉強を教えてくれ」と言うと驚いた様子で「何で僕?」と聞いてきた。

「クラスの奴が染矢に教えてもらったら解りやすかったって言ってたから」

そう答えると頷いて了承してくれ、放課後に勉強会をするようになり、次第に勉強以外にも話すようになった。

ただ、周りに人がいる時は話しかけてもまともに返してはもらえず、2人の時はそれなりに会話ができるようになり気づけば
真妃に惹かれていた。


告白してからもなかなか返事が貰えず、時間はかかったがなんとか受け入れてもらい付き合えるようになった時は嬉しかった。

その時に真妃の過去を聞いた時はショックと共に怒りが湧いてきた。

過去そのものではなくそんな辛い思いをしていたことを知ろうとしなかった自分にショックと共に怒りを感じたのだ。

「桐原が知らないのも当然だよ。この事を知ってるのは当事者以外では蒼介さんだけだから。高校の先生も中学の先生も知らないし」

真妃は何てこと無い風を装って軽く言ったがその手は震えていた。

そして俺は何でも無い風を装って抱きしめることしか出来なかった。




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