[携帯モード] [URL送信]

long(ファンタジー)
3.シンダイル


「・・・・・・・・」

佳斗は瞑っていた目を開けると見覚えの無い部屋に居た。

その部屋には自分だけではなく知らない人達がいる事に気がつくと警戒を強めた。

「そんなに警戒をしないでくれ」

話しかけてきたのは髪と目の色が1人だけ周りと違った男だった。

“うわっ、翠兄や悠兄以外でこんなイケメン初めて見た”

警戒しながらも周りをしっかりとチェックしていた佳斗は話しかけてきた男を見た途端、その顔から視線を外せなくなった。

「私の顔に何かついているか?」

男が困ったように聞いてくるのを無言で首を横に振る。

「そなたの名前を教えてくれないか?」

その問いにも無言で返す。

「言葉が判らない?」

「いえ、それはありません。この魔法陣を通ればこの世界の言葉は判る筈です」

初めて目の前の男以外の人物の声が聞こえた。

「兄様、まずこちらから名乗ってはいかがですか?」

「あぁ、失念していたな。私はレオンハルト・アルチュールだ」

また違う声がしたと思ったら男に名乗られてしまった。

「マリオン・アルチュールです。レオンハルトの弟です」

「アロイス・カシュバートと申します」

「息子のジョエル・カシュバートです」

ここまで言われてしまっては佳斗も名乗らざるを得ない。

「・・・竜崎佳斗です・・・」

「ケイトと申すのか」

佳斗が名乗ったことでレオンハルトと名乗った男は嬉しそうに頷いた。

「我が花嫁は心地良い声をしている」

「は?」

“今、花嫁とか言わなかったか?”

周りを見渡したが女性らしき姿は無い。強いて言えばマリオンと名乗った自分と同じくらいの年齢の人物がそう見れるが
さっき、“弟だ”と聞いたばかりだ。

「そうですね。美しいだけでなく声も良いなんてレオン・・陛下も良かったですね」

満足そうに頷く面々を見て佳斗は混乱した頭を落ち着かせようと声をかけた。

「あの・・ここはどこですか?」

「シンダイルだ」

「シンダイル?」

佳斗の質問にレオンハルトがやはり嬉しそうに答える。

「ケイト様がいらしゃった世界とは違う世界です」

「は?違う世界?」

混乱をおさめようと質問したのにますます混乱するような答えが返ってくる。

佳斗はどうすればいいのか判らなくなった。その様子をみて今度は心配そうにしながらレオンハルトが言った。

「ケイト、とりあえず座ったらどうだ?」

佳斗は話が長くなると思い、言われるまま勧められた椅子に座った。

「お茶でも準備しますね」

ジョエルが指輪に向かって囁くとすぐに扉がノックされた。

「ユーリです」

扉の外から声が聞こえるとイソイソとジョエルが扉を開けた。

入ってきたのは可愛らしい容姿をした男の子だった。

“レオンハルトさんといいマリオンさんといいその他の人も・・ここは美形ばかりなのか?”

佳斗が疑問に思っている間もユーリと名乗った男の子は手早くお茶の準備をし順に出していく。

「どうぞ」

ニッコリと笑いかけられながら自分の前にもお茶が置かれるが佳斗は取らなかった。

咎めるようなジョエルの視線を感じてそちらを見ながら佳斗は言った。

「せっかくですが納得できるまでは遠慮させていただきます」

「毒など入っていないぞ?」

「知らない人達の前で無防備にはなれませんから」

レオンハルトが言う言葉に素っ気ない態度で返事をする。

「それより説明をお願いします。僕が納得できるように」

「そうですね。それくらい警戒された方がこれからの事を考えるといいでしょう。陛下、説明は私がしましょう」

アロイスが頷きながらレオンハルトに聞くと首を振られた。

「いや、私からしよう。ケイト、何から聞きたい?」

ジッと見つめてくるレオンハルトの目を見つめ返しながら佳斗は口を開いた。





[*前へ][次へ#]

4/48ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!