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long(ファンタジー)
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「ハハハ。兄様は僕達の前ではあの通りだけど普段はどちらかというと冷徹というか感情を表に出さないからエリアナは驚いたんだよね」

「はい。普段、私達が知る陛下とは全く違ったものですから・・・・」

「エリアナさんから見た国王様はどんな方なの?」

今度は佳斗から問いかけられエリアナは思い切って口を開く。

「私からというか一般の使用人の間では陛下は冷静で厳しく無表情な方だと思われています。ですが厳しいのは間違ったことをする人達や弱い者苛めを
 する人達に対してですので怖いとか恐ろしいとか悪い意味でそのようなことを思う者はおりません。ただ、私達のことにまで気を配っては下さるのですが
 その時も無表情のままお話になるのでそれはちょっと緊張いたします・・・・もちろん、国民や私達のことを考えていただいているのというのは凄く
 伝わってきます。ですがとにかく無表情でいらっしゃいますので・・・・」

“陛下は洞察力はもちろんですが観察力にも優れていらっしゃいます。お優しいだけでなく厳しくしなければならないところはちゃんと厳しくなさいますし。
 それに懐が深いというか私達、使用人達の事にも気を配って下さいますし、民の声にもよく耳を傾けていらっしゃいます。
 王太子時代も優秀で近隣諸国からも評判で・・・・でもそれを鼻に掛けることもないし常に国や民の事を考えていらっしゃいます”

佳斗はユーリにレオンのことを尋ねた時に返ってきた言葉を正確に思いだしていた。

ユーリが話した内容とエリアナの言葉とを照らし合わせ若干の違いはあるものの、総じて否定はされていない様子に“やはり自分の勘は正しかった”と安心し
そして“無表情”という思いがけない人物像を語られるのを面白く感じた。

一方、エリアナは一息に話したものの会って間もない人物、しかもこれから自分が仕えることになる国王の花嫁に対し王の事を喋りすぎたかと思い、内心では
“これでお2人の仲が悪くなったらどうしよう”と非常に焦っていたが今度はその感情を上手く隠していた。

だから佳斗が笑いながら言った言葉に心底、安心した。

「フフフ。聞けば聞くほど僕が知っている国王様とは違い過ぎて面白い」

自分達から見ればレオンは決して面白いと評される人物ではない。自分はダグラスの姪という事と花嫁に仕えることが決まってから以前よりも王と会う機会が
多くなり以前より近寄りがたいという思いは薄らいだといえ、やはり無表情だという印象は変わらなかった。

レオンからみればエリアナは自分の師の姪であるものの来るか来ないか判らない花嫁のために短くは無い期間、護身術などの訓練を受けてきたということもあって
多少の同情みたいなものを感じていたが、幼馴染のマティウスとエリアナが恋人となってからは彼女にもそれなりの親しみは感じてはいた。

だが親しみは感じていたものの当然それ以上の感情を持つことは無く普段通りで接し、そのためにエリアナに“無表情で近寄りがたい”などと思われているとは
露ほども思っていない。

そして佳斗から見たレオンは無表情とは程遠く、むしろ自分やマリオン達に対しては表情豊かに接しているように見えたためエリアナから聞くレオン像が
あまりに違う事に“同じ人なのに接し方によって印象が変わるっていう心理学のサンプルみたい。でも本人が聞いたら苦笑いをしそう”などと考えていた。

ここで“怒りそう”ではなく“苦笑いをしそう”と思うことが自分にとってレオンが心理的な意味で自分のパーソナルスペースに入ってきていることに
佳斗はまだ気付かないでいた。




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