long(ファンタジー)
34. ・
いわゆる“作り笑顔”には自信があった佳斗だ。今まで、兄弟以外に気づかれた事はなかった。
それがレオンには通用していなかったのかと少々複雑な気持ちになり、それを誤魔化すようにカップを手に取る。
そんな佳斗の様子をレオンは愛おしさを隠さない目で見て、そんなレオンの様子を2人以外の人物達が微笑ましそうな目で見た。
「では陛下、花嫁様にご挨拶も終わりましたので私は下がらせていただきます」
「あぁ、ご苦労だった。報告は午後から聞くが先にアロイスに話しておいてくれ」
「承知いたしました。花嫁様、私に御用がありましたらいつでもお呼び下さい」
「ありがとうございます。ダグラム将軍のお手を煩わせることのないように気をつけます」
佳斗の言葉に頷き、もう1度、レオンに頭を下げるとダグラムは退出していった。
「マティウス様、エリアナ。ケイト様についてお話ししておきたいことがありますのでこちらまでお願いいたします」
佳斗に見えない位置でレオンがユーリに目配せをするとユーリは軽く頷き、2人を上手く部屋の外に連れ出した。
それを見届けレオンは佳斗に問いかけた。
「さて、ケイト。何か気になることでも?」
レオンからの問いに“何故判ったのか?”と驚きながらも佳斗は頷き、口を開いた。
「先ほどはあえて異世界から来た事や判らない事だらけということを避けた言葉になったのですがあれでよかったのでしょうか?」
「あぁ、あれでいい。本当は3人も私達が全幅の信頼を寄せている人物だからケイトの口から話してもよかったんだが、ちょうどいいから練習台になってもらった」
「なぜそんなことをしたのか判る?」
「・・・・・むやみに僕が何処から来たのかとか、この世界のことをまだよく判っていないという事を悟らせないようにするため?」
「そうだ。私はケイトが昨日、話してくれた能力を信じていないわけではない。だが、いくらその人物は悪意が無かったとしても周りの人間もそうだとは限らない。
それに各国の王達にケイトを披露するまではある意味、危険なのだ。
だからケイトにはその身を守るためにも今まで会った人物と私がいいと言った人間以外には自分のことを話さないようにして欲しいのだ」
≪窮屈だろうが判って欲しい≫
副音声でレオンの心の声を聞きながら佳斗はしっかりと頷いた。
「もう1つ、宜しいですか?」
「構わない。気になったことがあるなら何でも聞いてくれ」
レオンの言葉に「ありがとうございます」と返して口を開く。
「ダグラム将軍は国お・・・レオン様の武術のお師匠様なのですよね?」
「そうだが。それがどうかしたか?」
レオンのことを“国王様”と言いかけ、彼の眉がキュッと寄せられたのをみて佳斗は慌てて言い直す。レオンもそれで満足したのか機嫌よく答える。
「いえ、さすが将軍職を務める方だけあって威厳というか貫録もあって・・・・それに僕などがこのようなことを申し上げるのは失礼を承知の上なのですが
ご自分のお立場を弁えておられてさすがだなと思ったものですから」
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