long(ファンタジー)
33. ・
「通常はそうだ。しかしマティウスが入れない場所もある。だがそういった場所でもユーリやエリアナはケイト付きということで常に行動を共にできるからな」
「マティウスが入れない場所はケイトの寝室や浴室なんかだね。そういった場所では扉の外にいる警護より側仕えのほうが対処が早く出来るから。
あと着替えの手伝いの時とかも警護の者は部屋の外で待機になるよ」
レオンのあとを受けるようにマリオンも続ける。
「だからこの国では側仕えにもある程度の武術を習得してもらうようになったんだ」
「すみません。今のお言葉ではその習慣ができたのは最近のことのように聞こえるのですが」
佳斗の問いかけにまたもやレオンは満足そうに頷きダグラムに言った。
「どうだ?我が花嫁は実に聡明で美しいだろう?」
「・・・・やはりアロイスの言った通りです。あいつもたまには正直な事を言うのかと妙な感心をしてしまいました」
「旦那様はいつでも正直で真摯な方ですわよ」
「それはアンネ様だからです。あいつはアンネ様以外の前では相変わらず何を考えているか判らない顔を見せていますよ」
「あら、そうでしたの」
「アロイスは叔母上にむちゃくちゃ甘いからなぁ。兄様や僕にも見せたことがないような顔をするんだもん」
「それだけアンネ様のことを大事に思っていらっしゃるということです。お屋敷でもアンネ様の前では笑顔ですから」
「えぇ〜そうなの?いつも無表情なのに?」
「私の前で無表情だったことは1度もありませんわよ」
「僕は生まれた時からの付き合いだけどアロイスの笑顔って数えた方が早いくらいしか見たことが無いよ」
マリオンとアンネにユーリまで加わり話がどんどん別の方向へ行きそうになるのを佳斗はあっけにとられながらも面白く思い自然な笑いをうかべその様子を見ていた。
が、隣から軽く咳払いをする音が聞こえ慌てて表情を引き締める。
「叔母上、アロイスのことになると退きたくない気持ちはケイトのおかげで判るようになりましたがそれはまた別の機会にして下さい。マリオンとユーリもだ」
「ケイト様、失礼いたしました」
「はい、すみません」
「陛下、ケイト様。申し訳ありません」
3人から謝罪され佳斗は慌てて顔の前で手を振る。
「いえ、そんな謝っていただくほどのことではありませんし、気にしませんから」
≪ケイトの自然な笑顔が見られたから今回は良しとするか≫
レオンが悪戯っぽい顔をして佳斗の頭に囁くように言ってくる言葉に佳斗はどんな顔をしていいのか判らなくなる。
「ケイト様?いかがなさいましたか?」
ユーリの気遣う声にハッとし佳斗は「何でもないよ」と答えた。
“自然な笑顔って、国王様は気づいていたのか”
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