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long(ファンタジー)
30. ・  



佳斗はレオンに握りしめられた手はそのままに顔をアンネマリーの方へ向けると安心したような顔をした彼女と視線があった。

「花嫁様、申し訳ありませんでした。私、わざとあのような事を申し上げたのです」

「えーっと・・・・」

佳斗は何と返していいのか判らず戸惑ったが、いまだに手を離さないレオンが少し握る力を強くし自分の方を向いた佳斗に安心させるような笑みを見せた。

そんな2人をみて彼女はやはり安心したような表情をみせると言葉を続ける。

「主人から花嫁様のお人柄などについてはある程度、聞かされていましたがやはり、自分の眼で確かめたいと思いましたの。失礼はお許しください」

佳斗は握られていた手をはずすと頭を下げるアンネマリーの側に行った。

「アンネマリー様、頭をお上げ下さい。叔母上として気になるのは当然だと思います。気にしていませんしそういったお話を聞けるのはむしろ
 アンネマリー様やマリオンくらいだと思いますのでよろしければ他の事も教えて下さい。
 それより、アンネマリー様。僕の事は佳斗とお呼び下さい」

「許していただいてありがとうございます」

アンネマリーはもう1度、頭を下げると今度は悪戯っぽい顔をして言った。

「ではケイト様、私のこともアンネとお呼び下さい。それにレオンの話でしたらいくらでもいたしますわ」

「叔母上・・・・ケイトに要らぬことを吹き込まないで下さい」

「あら、私は本当のことしか言わないわ」

「ケイトも聞きたいことがあれば私に直接、聞けばいい」

「でもケイト様が聞きたい事は貴方が話づらいこともあるかもしれなくってよ」

「兄様も叔母上も・・・・それよりケイト、昨日から同じような会話が続いてるね〜」

レオンとアンネの話を苦笑いで遮りながらマリオンが佳斗に言うと、言われた佳斗も苦笑いを浮かべアンネは不思議そうな顔をする。

「ケイトは昨日から名前呼びのことで似たような会話ばかりしているんです」

「そうですの?」

「はい。来たばかりですし元の世界へ帰れないのなら少しでも早く、この世界に馴染めるようにしたいと思って皆さんに名前で呼んでもらえるようお願いしているんです」

「まぁ」

“陛下の花嫁になられるケイト様はご自分の世界に無い物でも受け入れられる、度量の広い方だ”

“ケイト様に対する陛下の様子は今までとは違う。去る者追わずだった陛下が誰かを心に留めることができると判り私は喜んでいるのだよ”

アンネの脳裏に昨夜、アロイスから聞いた言葉がよぎる。

「本当に旦那様の言われた通りの方ですのね。ケイト様、こちらの世界に慣れていただけるよう、私に出来ることがあれば何でもおっしゃって下さいませ」

「ありがとうございます」

佳斗は礼を述べると自分の席に戻った。

「陛下、ダグラム様とマティウス様が先ほどからお待ちです」

「ダグラムも?」

佳斗が座ったことを確認し、ユーリがレオンに告げると彼は少し驚いたように呟く。

「はい。エリアナも一緒です」

「そうか。おそらくエリアナが仕えるケイトがどんな人物か自分の眼で確かめたかったのだろう。
 ケイト、お前が疲れていなければ紹介したいが大丈夫か?」

「僕は大丈夫です」

自分を気遣う様子をみせるレオンに佳斗は笑みを浮かべ頷きながら答えるとレオンもその顔に笑みを浮かべる。

「本当にレオンは変わりましたわ・・・・」

2人の様子を見たアンネが嬉しそうに呟くのをチラッとみてレオンはユーリに3人を案内するように告げ、間もなく入ってきた人物を見て佳斗は密かに息を吐いた。

“やっぱりこの人達も美形じゃないか・・・・”




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