[携帯モード] [URL送信]

long(ファンタジー)
2.はじまり


竜崎佳斗は頭を悩ませていた。

何を悩んでいたかというと長兄の翠斗の自分に対する態度だ。

小さな頃から可愛がられ構われまくり、翠斗に恋人ができても“自分より弟を優先するなんて!”と言う理由で振られる。
すぐに次の相手が出てくるため不自由はしていないようにみえるが。

まぁ、見た目はイケメンだし頭脳明晰・文武両道と、周りは当然のことながら弟の自分からみても“こんな男性になりたい”と
思わせるだけのものは持っている。

なのに。

翠斗は佳斗限定でブラコンなのだ。もう1人、悠斗という弟がいるにもかかわらず佳斗にだけブラコンぶりを発揮する。

翠斗に言わせれば「悠斗は年が近いせいか可愛げがない」ということらしいのだが佳斗にしてみればいい迷惑だ。

今日も1週間後のパーティに着ていくスーツのことで翠斗と揉めていた。

「翠兄、いい加減にしてよ。服ならたくさんあるんだから」

「でもなぁ〜この新作、お前に似合うと思うんだ」

「そんなに服ばかり作ったって着るのは僕1人なんだから」

「いいじゃないか。あったらいつか着るだろ?」

取り寄せたスーツを佳斗の身体にあてながらしつこく言い募る。

「な?似合うって。これを着てくれたら今シーズンはもう言わないから」

「今シーズンは、って・・・」

翠斗はとにかく佳斗を飾りたがる。綺麗系美人の部類に入る佳斗は何を着せても着こなしてしまうので面白くて仕方無いのだ。

佳斗自身はそんなに物欲は無い方で洋服などTPOに合った物さえ着ればなんでもいいじゃないか、と思っているので
そんな翠斗の思いなど判ろうともしない。

「佳斗君、諦めたら?」

優雅なしぐさで飲んでいた紅茶のカップをソーサーに置きながら声をかけてきた女性に佳斗は目をむける。

「香華さん・・他人事だと思って」

香華と呼ばれた女性はパッチリした目元と口元に笑みを浮かべた。

「だって私も見たいもの」

彼女も味方になってくれないと判ると佳斗は大きな溜息をつき翠斗からスーツを受け取った。

「これで最後にしてよね」

「今シーズンはな」

ニコニコ笑いながら次のシーズンの事を匂わす翠斗に呆れながら着替えてこようと足を動かした時、佳斗の足元が光り始めた。

「なに!?」

佳斗は驚き慌ててその場から離れようとしたが足が動かない。

「佳斗!!」

「佳斗君!!」

翠斗と香華も慌てて佳斗の方に来ようとしている。

「翠兄!香華さん!」

そんな2人の目の前で一際、光が強くなったかと思うと弾けるように光が消えていった。

翠斗と香華はその眩しさに一瞬、目を瞑ったが目を開けた時には佳斗は光と共に消えていた。









[*前へ][次へ#]

3/48ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!