long(ファンタジー)
26. ・
「ケイト、どうかしたか?」
ケイトの食事をする手が止まっている事に気づき、レオンハルトが心配そうに声をかけてくる。
「いえ、何でもありません。お2人は仲が良いんだなと思っていました」
「そうだね、僕が怒っていても兄様は流しちゃうから喧嘩にならないんだ」
「マリオンでも怒るんだ?」
「理不尽なことをされたら怒るよ」
「私は理不尽な事は言ったことは無いぞ」
「兄様の場合は・・・・まぁ、いいけど」
どこか諦めたような表情を浮かべるマリオンを見て佳斗は「フフッ」と笑いをこぼす。
「?」
「どうかした?」
不思議そうな2人に佳斗は笑みを浮かべたまま口を開いた。
「いえ・・・・何処の世界でも弟は大変だなと思って・・・・昨日も少しお話ししましたが僕も長兄には諦めた部分がありますし」
「そう言えば言ってたね」
クスクス笑いながら佳斗の言葉に反応するマリオンとは対照的にレオンハルトはむくれたような顔をする。
「聞き捨てならないな。私はマリオンに諦められるようなことはしていないぞ?」
「多分、兄様には判らないよ。これは構い過ぎる兄に対して感じる弟の気持ちだから」
「ますます聞き捨てならないな」
「まぁまぁ。陛下、お茶のお代わりはいかがですか?」
その場の雰囲気を変えようとユーリがお茶をすすめ、レオンハルトは苦笑いを浮かべるとカップをユーリに差し出した。
「あの・・・・国王様のお好きな物は何ですか?」
佳斗もレオンハルトの気分を変えようと“唐突かな?”と思いながらも問いかける。
「私も好き嫌いは無いな。それよりケイト、私の事は名前では呼んでくれないのか?」
レオンハルトは佳斗にも苦笑いを向け「気を遣わせてしまったな」と呟くと問いに答え、ついでとばかりに言ってきた。
「そんな畏れおおいです」
「だが、マリオンやユーリ、ジョエルもアロイスも名前で呼んでいるのに私だけ呼んでもらえぬのは寂しい」
「でも・・・・」
斜め向かいから「寂しいって・・・・兄様の口からそんな言葉が出るなんて」と驚いた声が聞こえる。
「ケイト」
レオンハルトの促すような声色に内心“呼ばないといけないんだろうな”と思いながら聞いてみた。
「では何とお呼びすれば?」
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