long(ファンタジー)
13. ・
「ケイト、指輪にキスをしてくれないか」
「は?」
突然の申し出に佳斗は戸惑ったがジッと自分を見つめる彼の顔に不安を感じとり、何も聞かず言われたようにした。
「ありがとう」
そう言うともう1度、指輪にキスをして大きい方を自分の指にはめ、小さい方を持つと佳斗の手をとる。
「この指輪をはめてくれないか?」
急に手を取られ再び戸惑う佳斗にマリオンから声がかけらる。
「ケイト、その指輪に今、兄様が魔力を込めたんだ。これで兄様とケイトはいつでも意思の疎通が可能になったんだよ」
「だがその為にはケイトにもこの指輪をはめて貰わねばならない」
改めて「はめてくれないか」と言うレオンハルトに佳斗は頷き無意識に左手を差し出した。
「判りました。はめさせていただきます」
佳斗の言葉に嬉しそうに左手の薬指に指輪をはめる。
「ありがとう」
「いえ・・」
「陛下、お気が済んだなら参りましょう」
アロイスがレオンハルトを促しレオンハルトはしぶしぶといった感じで扉に向かった。
「ケイト、もし私にも話を聞かせていいと思ったらその指輪にキスをしてくれ。そうすれば私にも佳斗の声が聞こえる」
「はい」
「ではジョエル、あとは頼んだぞ」
「承知しました」
アロイスに背中を押されるようにしながらレオンハルトが出ていくとジョエルが大きく溜息をつく。
「全く、あんなレオン様は初めてみますね」
「本当、よっぽどケイトの事が気になるんだろうね。ねぇ、ケイト。どうして何も聞かないで兄様の言う事を聞いたの?」
ジョエルの言葉にマリオンはクスッと笑いをこぼし、佳斗は無自覚に頬を染め答えた。
「戸惑いはしましたが・・・国王様が僕に害をもたらすような事はしないと思いましたし、何だか不安そうに見えたので・・・・」
そんな様子をみたジョエルが思いがけない事を聞いてきた。
「ケイト様はレオン様の事をどう思われますか?あぁ、もちろんレオン様の事を全然、知らないのを承知の上で聞いています」
ジョエルのいきなりの質問に佳斗は少し考え、口を開いた。
「そうですね・・・第一印象は悪くないというか・・・僕の事を考えてくれているっていうのは良く判りますし・・・
ユーリから聞いた国王様は民の声もきちんと聞かれる方のようですし・・・」
「では好意を持つ可能性もあるという事ですか?」
「ジョエルさん、結論を急ぎ過ぎですよ。ケイト様はこちらに来られたばかりです」
表情を変えずどんどん話をすすめるジョエルにユーリが僅かに眉をひそめながら注意をすると彼は慌てたように言った。
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