あれ程までに辱められて、あれ程までに身も心も踏みにじられてきたと言うのに、自分は一体どうしたと言うのだろうか。
もしかして、もしかして…。
「どうした?」
ふいに問われて、アリスは我に返る。
「な、何でもないの」
と、男はアリスの答えが腑に落ちないのか、抱き締めていたアリスの胸を、くすぐるように揉んだ。
「あ…やんっ、だめっ」
「そうか、俺に秘密を持つような悪いコには、お仕置きだな」
「えー、まだ…」
まだ、こうして遊んでいたいと言いかけ言葉は、ダークの唇にあっさりと塞がれた。
「たっぷり白状させてやるからな、アリス」
「教えて、あげない」
もう一度ペロリと舌を出して、アリスは男の腕を擦り抜けた。そして、身軽に跳ねて、ダークを振り返った。
「もう一度、つかまえられたら教えて、あ・げ・るぅ」
言って、アリスは笑い声を上げて駆け出した。
「言ったな」
追いかけるダーク。そのダークに、嬉しい悲鳴を上げて逃げるアリス。
戯れる二人を、真夏の太陽が照りつけていた。