ガールシリーズ
1
「ご主人さまは奇麗好きでいらっしゃるので、家中の隅から隅まで磨き上げるように」
そう言った執事の男はアリスを大きな家に残して帰っていった。
ここは、避暑地の別荘である。
もうじき、この別荘の主が避暑にやってくる。それまでに、ここをピカピカに磨き上げることがアリスの仕事だった。
割りの良いアルバイトに、アリスは一も二もなく飛びついた。掃除は得意だったから。
それなのに、ここへ来て驚いてしまった。別荘なんて言うから普通の家よりも小さいだろうと踏んでいたのだが、小さいどころか、大邸宅と言って良い程の大きさだった。
こんな別宅をもっているなんて大層な金持ちだろう。庶民の自分からすれば、別の世界の人間である。
「仕方ないか」
アリスはモップを手に、元気に掃除を始めた。
「あれ、こんなところが…」
アリスはふと足を止めた。
そこに、今まで気づかなかったのだが、地下へ降りる階段があったのだった。それは、収納庫のような蓋に隠されて、廊下の隅にこっそりあった。
「ワイン蔵でもあるのかしら…」
この階段は錬金術で作ったに違いない。あのダークのこと、こんなことは朝飯前であろう。
階段のその先にあるものは間違いなく地下室である。アリスの脳裏にはそんなことしか思い浮かばなかった。
「取り敢えず、掃除しておかなくっちゃ」
一人ごち、アリスはモップを手にしたまま、そっと階段を降りていった。
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