銀の森の魔物たち
T-3



「湯冷めしないようにな」

 バートンがそう言ってフィオーラをベッドに招き入れた。

 元々一つしかないベッドに、フィオーラが小さい頃にはバートンと一緒に寝ていたが、最近ではバートンはリビングのソファで寝ることが多かった。

 だが今夜はひどく寒い上に、湯が冷めるまで風呂に浸かっていたため、互いの身体が冷えてしまっていた。

 自分はともかく、フィオーラが風邪をひいては大変とばかりに、バートンはフィオーラを腕に抱いて毛布にくるまった。

「ねぇ、父さん」

 バートンの胸に顔を埋めていたフィオーラが顔を上げる。また顔を赤らめて。

「何だ、フィオーラ? 寒いのか?」

 聞いてバートンはフィオーラをぎゅっと抱き締めた。フィオーラはその腕を窮屈そうにしながら。

「違うの、逆」

 言って、起き上がる。

「すごく熱いの」

 フィオーラはネルのパジャマを脱ぎ捨てた。その下には肌着ひとつつけていなくて、たわわに実ったフィオーラの胸の果実がバートンの目の前で揺れた。

「あー、気持ちいい。下も脱いじゃうね」

 パジャマのズボンも下ろしてショーツ一枚になり、再びバートンの横に潜り込んだ。

「フィオーラ…」

 恥じらいのない娘に、バートンは元気になる息子を諌めるが大変だった。

「そんなに熱いなら私はソファで寝るが?」

「やだっ」

 フィオーラは言って、バートンの首にがっしりとしがみついてきた。

「今夜は寒いから一緒に寝るの」

「熱いのではないのか?」

「寒いのっ」

 フィオーラは言って、バートンの胸に擦り寄る。

「でも父さんはあったかい」

 そう言うフィオーラは何者にも代え難いくらいに可愛くて、バートンはぎゅっとフィオーラを抱き締めた。

 明日こそは『インキュヴァ』の実を探し出そうと決意する。フィオーラを完全に成熟させ、この思いを遂げるために必要な果実――バートンは日々それを探し求めていたのだった。

 バートンは眠りかけたフィオーラの額にキスをする。

「おやすみなさ…」

 呟く言葉の最後ははっきりと聞き取れなかった。

「ゆっくりお休み、私のサキュバス。そして早く大人になるといい」

 眠りの森に迷い込んでしまったフィオーラの唇に、自分の唇を重ねる。

 戸外は雪が舞い散り、氷点下だったが、二人が抱き合う毛布の中は心地よい温かさだった。









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あきゅろす。
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