夜の街 蝶の舞
W-2<完結>

「貴方からね。それから、貴方も」

 アリスは手近なもう一人の男を指名する。

「一度には二人くらいでいいかなぁ。次の人達は順番を決めておいて。ご奉仕してあげるから」

 ウインクひとつが、ハートマークとなって四方に撒き散らされるような錯覚を覚えた。こいつは天然の男好きだと、ダークはまた目眩を感じた。

 アリスは二人の男達に抱き上げられ、そのまま隣の部屋へ消えていった。

 ドアを締める前に一度ダークを振り返り、それは嬉しそうな笑みをうっとりと浮かべて見せた。

 それを見送ってから、ダークはバルドーを振り返った。

「オヤジから伝言あるぜ」

 ギラギラした目をダークに向けてくるバルドー。

「あんたのその目、もっと早くに見せてくれたら俺の気持ちも変わったんだがな」

 苦笑混じりに言う。

「『役立たずに用はない』そうだ」

 銃口を向けた。

「まて、待ってくれ」

 バルドーは慌てて命乞いをする。

「これは何かの間違いだ。私は十分に役目を果たした。アリスの父として、恋人として」

 ズキュンと銃声がして、バルドーの膝から血が吹き出した。

「知ってるぜ。アリスがあんたを選んだ時には、あんたもお盛んだったことくらいはな」

 バルドーは膝の痛みよりも、頭に押し付けられた銃口に血の気が引く。

「6つのアリスをレイプしてあの好き者を目覚めさせたのは立派だったが、所詮、ロリータ相手のお遊びしか満足にできなかったってことだろ? あいつの身体はもう立派に大人だ。だからもうあんたのモノでは満足できなくて、あんたは道具に頼るしかなくなったって訳だ。ま、元々は俺仕様に調教されてたから仕方ねぇんだけどな」

 ぐいっと、銃口を強く押し付けられる。

「待ってくれ」

 身を引き、逃げようとするバルドーを取り押さえるのは元の自分の部下達だった。

「アリスはもっとイイ女になるぜ。見られなくて残念だったな」

 言い終わると同時に二発目の銃声がした。飛び散る血飛沫を避けようともせず、ダークは返り血を浴びたままニヤリと笑う。

「あんたも、あんたなりにアリスを楽しませてくれたようだがな」

 言ってダークはベッドルームのアリスを振り返る。防音になっている為、こちらの音は聞こえないが、ベッドルームの中の様子も伺い知れない。

 どんなプレイをしているものか。想像して、ふと、あの二人の男達が不憫に思えてきた。

「二人じゃ足りなかったかもな…」

 呟いて、次の順番を待つ男達に声をかける。

「次は三人ずつで行け。その方がアリスも喜ぶ」

 男達に動揺が走る。そんなことで怖じけづいてどうすると渇を入れたくなるところを我慢して、血糊のついた上着を脱ぎ捨てた。

 動かなくなったバルドーが引きずられて部屋を出て行くのが目の端に映ったが、もう関心はなかった。

「シャワーでも浴びて街に女を探しに行くか」

 アリスがここの男達全員の相手を済ませるのにどれ程の時間がかかるものか。二日か、三日か。その間、自分も待っているつもりはなかった。

 ダークはもう一度アリスのいるベッドルームのドアに一瞥を加えてから、それに背を向けた。

「終わったら、呼びに来てくれ」

 そう言い残して、部屋を出ようとするダークの目の前を金色の粉が舞った気がした。

 もしかすると、夜も明けぬうちに呼び戻されるような、そんな予感がした。






  The Happy End










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あきゅろす。
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