夜の街 蝶の舞
W-1
「さて、アリス。ここからが本番だ」
ダークは膝の上に座らせているアリスのガウンの中に入れた手を、まだ物足りなさそうにダークの指に吸い付いている股間から抜く。
「やんっ」
甘えた声を出してダークの首にしがみつく。
その仲睦まじい二人の様子を見下ろすように正面に立つバルドーは、既に屈強な男達に取り囲まれ、捕らわれていた。
「この支部の幹部を決定するのはお前だ、アリス。さあ、お前の好きな男を選べ」
言われてアリスはキョトンとする。
「知らなかったのか? この支部の最高幹部はお前が決めるんだ。バルドーも昔お前が選んだんだ。覚えているか?」
アリスは首を振る。10年以上も前のこと、幼すぎて覚えていないのは無理もなかった。
「どのみちアイツはもう十分にお前を満足させてねぇんだろ? 自分でする前に俺に譲ったくらいだからな。お払い箱だ」
アリスは、ちらりとバルドーに目をやる。
「うん、最近は変な遊びばかりしてるの…」
それはアリスがバルドーの年も考えずに毎晩ねだり過ぎたから精根尽きたのだろうと想像はついたが、敢えて言わなかった。
ダークはアリスを膝の上から降ろし、ソファの上に仰向けさせると、ゆっくり足を開かせる。
「お兄ちゃんじゃ、ダメ?」
問うアリスに、ダークは首を振る。
「俺は中央に戻らなきゃならねぇからな」
言って、男達を振り返る。
「アリスをものにして、この支部を仕切る幹部をこれから選定する」
男達が一気に色めき立つ。
バルドーの娘として、可憐で可愛らしいアリスを手にしたいと願っていた者は少なくない。今まさに自分にそのチャンスが巡り来たのだから。
「誰からだ? 一番手は」
ダークの声に、鼻息の荒い男達が一斉に名乗りを上げた。その数の多さにダークは苦笑する。
「おいおい、いくらアリスでもいっぺんに全員は無理だぜ」
「やりたいっ」
ダークの後ろから声が上がる。振り返るとアリスが立ち上がったところだった。
「私、頑張るから」
ダークの腕に縋り付き、その瞳は一心にダークに向けられる。
「その代わり、頑張ったらお兄ちゃんにお願いがあるの」
「お願い?」
「この支部を任せられるのは私が満足できる人なんでしょ? だったら、それはお兄ちゃんしか有り得ないんだから、お兄ちゃんが支部長になってよ」
「は? 今、ダメだって言ったじゃねぇか」
「この東部で私に逆らうなんて許さないからっ」
アリスの真剣な瞳は、ダークに拒否権を許さない程に強い光を放っていた。それは何よりも、ダークの妹である証拠に他ならないのだか。
ダークは軽く目眩がしてきた。
「大丈夫、お兄ちゃんなら東部と中央のどちらとも治めることはできるわ。私も手伝うし」
アリスはにっこり笑った。可愛らしい笑顔に、ダークは別の意味でくらくらしてきた。
このアリスに勝てる男なんていないのではないか。自分を含めて。
「ね、いいでしょ? おにいちゃん」
「…仕方ねぇなぁ…」
そう言いながらも、内心では狂喜している自分がいた。
この妹を他の男のものにするなど、首領であり父親であるボスが許しても、自分はとても許せなかったのだ。
「そり代わり、選ばれなかった、ここにいる若衆達に存分に奉仕しろよ」
「分かってるっ」
言ってアリスは近くにいた部下の男に擦り寄る。
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