夜の街 蝶の舞
U-2
ぐったりとして、ベッドの上に横たわるアリスは、ホテルに入る前に気を失ってしまった。否、そのフリをしていた。そのアリスを抱いて、ダークはカギを受付で受け取って中へ入った。
部屋の中は意外にもシックに纏められ、普通のホテルのようだった。ただ、ベッドだけはキングサイズだったのと、戸棚の中に大人向けの玩具がぎっしり詰まっていたのが普通のホテルと違う所ではあるが。
「アリス、アリス」
ダークが頬を叩くと、アリスは目を開けた。
「ダークさん…」
「大丈夫か?」
起き上がろとするアリスを支えて、ダークはベッドの縁に腰掛けた。アリスは具合が悪そうにダークにもたれ掛かってきた。
「甘いジュースだ。飲むか?」
アリスの目の前にダークが差し出したのはピンクの液体の入ったグラスだった。
アリスは奇麗な色のそれを何のためらいもなく手に取った。
「ありがとう、ダークさん」
にっこりと笑ってアリスはグラスに口をつけた。
「あまい」
それは至極飲みやすく、アリスの喉を流れ落ちていった。
「うまいか?」
「うんっ」
一気に飲み干して、アリスは笑顔を浮かべた。まるで魔法のように気分が良くなった気がした。喉が渇いていたのかも知れない。
「俺のも飲んでいいぞ」
言って、空になったグラスの代わりに差し出すダークのグラスには、深いブルーの液体が入っていた。
「いいの?」
「ああ」
アリスはためらいもなく受け取り、先程のものと同じ甘さだと思い、一気に飲み干した。
少し苦い気もしたが、美味しかった。それは、乾いたアリスの喉と身体に染み込むようだった。
ほんわかしてきて、身体がポカポカしてきた。
「そろそろ帰らなくっちゃ」
アリスは呟くように言って立ち上がった。が、クラリと身体が傾いた。それをダークが抱くように支えた。
「私、どうしちゃったの…?」
くるくると目の前が回って見えた。ダークの差し出したのは実はアルコールだった。最初のものは口当たりの良い軽目のもので、後のものはかなりの度数のものだった。
「何だか暑くなってきちゃった…」
アリスは上着のボタンを外そうとするが、手元が覚束無い。
そのアリスの手を取って、ダークがボタンを外していく。ゆっくり、アリスの身体をベッドの上に横たえさせながら。
アリスはされるままに、うっとりとダークの顔を見つめていた。
「もっとキモチ良くなろうな?」
優しく囁かれ、アリスは潤む瞳で可愛らしくほほ笑んだ。
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