美少女と野獣
U-1
「アリスッ」
町に入るなり、声をかけられた。振り返ると、見慣れた男が立っていた。この町の実力者で、アリスの恋人の一人であるヴァン・ゴルドールだった。
ゴルドールはアリスに駆け寄り、その身を抱き締める。
「どこに行っていたんだね? 心配したぞ」
「え…?」
アリスはキョトンとして、ゴルドールを見上げる。町中の娘達が騒ぐ程に端正な顔立ちの色男――その男がアリスの顔を覗き込んで心配そうにその目が細められる。
「三日も帰らずに、一体どこで何をしていたんだね?」
「三日?」
言われてアリスはまたキョトンとする。三日だなんて――たった一晩の筈なのに。
「あの嵐の日から家にも帰らず、町中の人が君を探したんだよ」
そうだ。昨夜の激しい嵐なら、森もまだ水浸しの筈。アリスが目を覚ました時、すっかり地面は乾いていたではないか。
でも、三日三晩も。気づかずあの獣と欲望のままに交わり続けていたと言うのか。この、未だ下着を濡らし続ける精液の量は、その為だと言うのか。
呆然とするアリスの肩をそっと抱いて、ゴルドールは呟くように言う。
「君が無事で良かった…」
「ゴルドールさん」
見上げると、アリスを見返して優しく笑う。どんな女性でもときめくその優しい眼差しに、アリスの胸も高鳴った。降ってくる甘い口づけに応えて、抱きしめ合う。
「もう君をどこにもやりたくない。愛している、アリス」
言ってゴルドールが懐から取り出すものは、ひとつの小箱だった。それをアリスの前に差し出して、見上げてくる少女にまたほほ笑む。
「開けてくれないか?」
アリスはゴルドールの手からそれを受け取り、蓋を開ける。
「え…っ」
そこに、奇麗に輝くダイヤモンドの指輪があった。
「結婚して欲しい。君がもう少し大人になったらと思っていたが、とても待ちきれない。明日にでも式を挙げたい。今すぐにでも私だけのものにしたい」
「ゴルドールさん…っ」
ゴルドールはアリスが抱きついてくるのを軽く受け止める。まだ幼いアリスにとってゴルドールのプロポーズの言葉はとても刺激的だった。
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