美少女と野獣
T-4


 浴室を出ると、部屋の中のテーブルには食事が用意されていた。温かな湯気の上がるスープと、ソースのたっぷりかかった肉。柔らかそうなパンは焼きたてだろうか。新鮮な野菜には香り高いドレッシングがかけられていた。

 途端、アリスの腹の虫が鳴った。

 疑うことはなかった。森の奥深く、不気味な屋敷、不気味な男の住む場所であることは、この暖かな部屋と美味しそうな料理がすっかり忘れさせてくれた。

 アリスはためらわず、皿の物を口にした。

 どれも極上に美味だった。あの男が作ったものだろうか。そう言えば「後で用意させる」と言っていた。召し使いか誰か他にいるのだろうか。それにしては人の気配が感じられなかったが、アリスは不思議に思うことはなかった。

「おいしいっ」

 アリスは食事をほお張る。

 肉は柔らかく、スープは身体の芯から暖めてくれた。手を伸ばしたグラスに注がれていたワインをペロリと嘗めて、全身がほてった。

 気持ちが良かった。暖かな部屋でほんわりとした気分になり、アリスはそのままソファの上に身を投げ出した。

 睡魔だった。

 それとともに、先程の場所が、心地よく疼いていた。

 とても気持ち良くて、アリスはそのまま柔らかなソファの上で眠りに落ちた。

 ワインの中に潜められた睡眠薬と媚薬に、ゆっくりと浸されながら。






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あきゅろす。
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