美少女と野獣
エピローグ


「意外と早く解けたものだな」

 いつの間に現れたのか、上等のソファに腰をかけ、どこから持ち出したのかワイングラスを揺らしながら、男が言った。その気配に気づいて、ダークが振り返る。

「どの面下げて出てきやがった、このクソオヤジ」

 本心から嫌そうな表情をその男に向け、ダークは毒づく。男はそのダークに平然とした顔で返す。

「お前にそんなふうに言われる覚えはないがね、ドラ息子」

「何言ってやがる。元はと言えばあんたが俺にあんな呪いをかけてトンズラしやがったからだろうがっ」

 息子の言葉に、父は肩を竦める。

「4歳の妹を強姦する息子に罰を与えただけだよ」

「和姦だっつってんだろっ。第一、あの時はアリスの方から誘ってきたんだ」

「信じられるか。4歳の女の子だぞ。お前が一方的に悪いに決まっている」

「てめぇっ、息子の言葉も信じられねぇのかっ?」

「当たり前だ」

 一触即発。乱闘騒ぎにならんとする寸での所でドアが開かれた。

「あれ?」

 アリスがちょこんと首だけ覗かせる。

「ごめん、お客さん?」

 小首を傾げるアリスに、ダークは父にヒラヒラと手を振って見せる。

「ああ、もう帰るそうだ」

 ジロリと父を睨むダーク。

「ここは俺の城だ。あんたは呪いをかけた時にそう言ったじゃねぇか」

 チッと舌打ちをして立ち上がる男。

 上背はダークよりも上か。その男にアリスがチラリと目を向けてきた。

「もう、帰っちゃうの?」

 部屋に入り、アリスが駆け寄るのはダークではなく、その男の方だった。その手を掴んで。

「今度はゆっくりしていってね。私、おもてなしするから」

 言って見上げてくる瞳は艶めいていた。自然にくねらせる身体から、甘い芳香が漂う。無意識だろうか、どう見ても誘っているとしか思えなかった。

 見つめ合う二人の様子に気づいて、すかさずダークはアリスを父の手から引きはがし、腕の中へ抱き寄せる。

「アリス、今夜は俺と将来を語り合うだろう?」

「えーっ、でもぉ」

 そのアリスの唇を無理やり奪って、ダークは父にとっとと帰れと手の甲を振って見せた。

 父はまた肩を竦める。

「アリス、その気ににれば私の所へ来なさい。ダークよりすごい事をしてあげられるぞ」

「ホントッ?」

 今にも飛び出して行こうとするアリスを押さえ付けるダークは、父に向かってもう一度怒鳴る。

「とっとと帰れ、クソオヤジッ!!」

 その言葉に、男は笑いながら、風に消えた。

 ベッドに折り重なる二人を残して。






    The Happy End









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