美少女と野獣
T-1
天上から稲光が落ち、間近にあった高い木に落ちた。
「きゃああっ」
思わず悲鳴を上げるアリスの眼前で、巨木が真っ二つに引き裂かれて煙を上げる。この豪雨に、炎にはならず、真っ黒な煙を出すだけだった。
森の中で迷ってどれくらい歩いただろうか。ついには降り出した雨に全身を濡らしながら、アリスは泣き出したいのをこらえながら歩き続けた。
しかしその足も既に冷たく棒のようになり、もう歩けないとしゃがみこんだところの落雷だった。
アリスは慌てて立ち上がり、駆け出す。が、すぐに力尽きて近くの木にもたれ掛かった。
「もう…歩けない…」
そう呟いて枯れ草の上に座り込んだ。濡れたスカートの下の下着に、冷たい水たまりの水が染み込む。こごえてしまいそうだった。
視界がぼんやりしてきた。
ふと、その目にそこになかった筈のものが見えてきた。否、アリスが今まで気づかなかっただけで、それは森の中の木々に埋もれるように立っていた。
冬枯れた木々と同じように、冬枯れた廃墟のような屋敷だった。
天の助けに見えた。
アリスは立ち上がらない足を立ち上がらせ、ふらつく足取りでその屋敷へ向かった。
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