美少女と野獣
W-3
崩れ落ちた天上の瓦礫の向こうに、野獣は横たわってた。その周囲を血の海にして。
アリスは駆け寄る。
「しっかりしてっ」
野獣を抱き起こし、揺さぶる。
「お願い、目を開けて」
その声に野獣は漆黒の眼を少し開けて、アリスを認める。
「どうして…どうして戻ってきた?」
「貴方を残して行けないから」
そう言うアリスの腕を払いのけようとする。
「俺は動けない。お前だけでも逃げろ」
「嫌っ」
アリスは野獣にギュッとしがみつく。
「貴方が逃げないのなら、私もここにいる」
「アリスッ」
咎める野獣に、アリスはその瞳を見つめる。
「好きなの、貴方のことが」
その言葉に野獣は目を見張る。
「お前、俺のこの姿が分からないのか?」
あり得ないことだと言わんばかりの野獣に、アリスはわずかに首を振る。
「ステキだよ」
言ってアリスは野獣にそっと口付ける。触れるだけのキスをして、にっこり笑顔を向ける。
「私、こんなにドキドキしたことないよ。力強くて、優しくて…」
アリスはうっとりしたような、夢を見ているような表情を向ける。
「すっごくイイんだもの」
そのアリスを抱き締める。
「いいのか? こんな俺で」
「うん」
頷いて、アリスは野獣の眼をまっすぐに見つめる。
「大好き…ううん、愛してる」
言って、また口付ける。今度は深く。
開いた唇から侵入し、絡み合う舌と舌。
二人を取り巻く炎が勢いを増していく。このまま、二人を飲み込みそうだった。
アリスは仰向けになる獣の上に跨がって、剥き出しの突起に腰を深く沈めていった。
「ん…ああ…」
結ばれたままなら、死ぬのも怖くはなかった。二人を包む炎も煙も、二人を熱くするだけだった。
崩れ落ちていく柱と壁に挟まれて、二人は手を取り、握り合った。
「貴方に出会えて良かった」
「俺もだ、アリス」
見つめ合って、口づけを交わす。
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