美少女と野獣
プロローグ


「お前の犯した罪は深い。その罪をあがなう為、野獣の姿となり、深い森の奥でたった一人で生きるがいい。その恐ろしい姿に、誰もお前に近付かぬであろう」

 怪しげな魔法使いのような衣装を身に纏い、この城の主だった男が杖をかざして魔の言葉を唱える。

 見る間に、立派な城のような洋館は古ぼけた屋敷に変わった。

 そして、魔法使いの前で膝折れている男は、全身を獣の毛で覆われた野獣の姿へと変わっていった。

「だがお前も私の可愛い息子。ひとつだけチャンスをやろう」

 父は、野獣となった男を見下ろす。

「あの娘の真実の愛を受けることができたなら、魔法は解けるだろう」

 そう言った父を、男の漆黒の瞳が見上げる。

「その恐ろしい姿で頑張るいい」

 言って、魔法使いは風に消えた。

 残ったのは、古ぼけた屋敷と失意に暮れる野獣だけだった。






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あきゅろす。
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