青い月赤い石


 ガックリと肩を落とすセティアに、男はため息をつく。

「まあいい。お前、家事くらいはできよう?」

 その言葉に顔を上げると、男はわずかに目を細める。また、胸が鳴る。

「ここにいさせてやる交換条件だ」

「え…?」

「給料も払ってやる。悪くはなかろう?」

 ニヤリと笑う男に、セティアは慌てて言い返す。

「お給料なんてあたし…置いていただけるだけで十分だから…その…」

 セティアは思わず立ち上がって、一生懸命に説明する。そのセティアに男は表情を和ませる。

「給料がいらないんなら小遣いとして取っておけ。俺はどちらでもかまわん」

 言って立ち上がり、セティアの側に寄る。見下ろしてくる目がひどく優しげに見えて、セティアは胸が高鳴るのを感じる。

 いつか、この目を見たような気がする。とても懐かしくて、切ない思いが胸に広がる。

「あのっ、あのっ、よろしくお願いしますっ」

 ペコリと頭を下げる。そのセティアの肩に手を置いて、男は肩の上の髪を指に絡める。ハニーブロンドが吸い付くように男の手に絡まる。

「ああ、俺はガゼル・ヴァリュックだ」

「あたし、セティ…セティア・ラズベルって言います」

 にっこり向ける笑顔に、ガゼルは一瞬眉をひそめるが、すぐに優しげな目でうなずいた。

「そうか、よろしくな。セティア」

「セティって呼んでください。ヴァリュックさん」

 ガゼルはセティアの肩から背に手を回す。

「来い、屋敷の中を案内する」

 セティアは言われるままにガゼルに従う。

「あ、それから、『ヴァリュックさん』はやめろ。俺のことはガゼルでいい。今日からは家族なんだからな」

 セティアは、そう言われてガゼルの顔を見上げる。見返す瞳が優しい色を映す。

 胸の奥がまた熱くなる。

 ここへ来てよかったと思った。やはりばっちゃまの言うことに間違いはないのだと思った。









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