青い月赤い石



 見上げた門は丈高く、広い庭の奥に見える屋敷はもっと大きかった。

 セティアはそれを見やって唖然とする。

 先日、いまわの際で告げられた事実。そして教えられたこの屋敷。きっとセティアの力になってくれるからと、言い残したその言葉を信じてこのセントラルシティまでやって来たのだが、尋ね当てたのはこの通りの大豪邸だった。

 思いっきり気後れするセティア。

 大きくため息をついてみるが、今更故郷に帰る汽車賃もなかった。帰っても迎えてくれる人もいない。

 それに、セティアにはこの街でどうしてもしなければならない使命があった。

 とにかく、ここでやっていくしかない。

 セティアはピンと背筋を伸ばして、呼び鈴を押そうと手を伸ばした。

 その時、いきなり背後から声がした。

「何の用だ?」

 ギョッとして振り返ると、そこに背の高い男が立っていた。それまでまったく気配を感じなかったと言うのに、いつの間に現れたのだろうか。

「あ…あの…」

 セティアは門を背に、一歩後ずさる。

 冷たい漆黒の目がセティアを捕らえる。

 奇麗な目だと思った。透き通るように澄んだ目だった。が、ひどく悲しげにも見えた。その目が僅かに細められる。

 ドキリと、胸が鳴るのを感じた。

 スッと伸びてきた相手の指が、セティアの顎を捕らえて上を向かせる。

「新しいメイドか?」

「……は?」

 何のことかと聞き返そうとして、男は門を開けた。そのまま中に入っていく。ぼんやりとその背を見送っていると、セティアを振り返った。

「何をしている、早く来い」

「え…えっと…はいっ」

 セティアは何か勘違いされている気もしたが、言われるままに後に続いた。

 そして、大きな扉をくぐった。









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あきゅろす。
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