青い月赤い石




「似合っている」

 ガゼルの呟く言葉に気づいて振り仰いだ。

「ホントですか?」

「ああ」

 わずかに目を細め見やるガゼルにセティアはふわりと笑う。

 トクン。

 心臓が高鳴るのを感じて、先に目を逸らしたのはガゼルの方だった。何故か顔が熱い気がした。

「じゃあこれとこれでいいな?」

 ガゼルはさっさと切り上げようとする。が、セティアは躊躇したまま。

「でも…」

「これじゃ、不満か?」

「そうじゃなくて」

 セティアは髪飾りを外すと、ネックレスとともにテーブルの上に戻す。

「あたし、こんなにしてもらう理由なんてないです」

 うつむくセティア。

 ガゼルは、そんなセティアの顎を取って上を向かせる。

「言っただろう。パーティ用だ。お前の為じゃない」

「え…」

 セティアの表情が一変する。悲しそうなそれだった。ガゼルはその表情にすら胸が詰まる思いがした。それを慌てて振り払う。

「だから他の女に見劣りしない物を選べ。俺との釣り合いを考えろ。いいな」

「ガゼルさま…」

 ガゼルはセティアに背を向ける。

 二人を見比べながら、商人は控えめに口を挟んだ。

「では店の方へ来てもらえないか。今日も上等なものを用意してきたつもりだが、店ではこのお嬢さんに合うものを選べるぞ」

「そうだな」

 背中を向けたまま答える。

「任せる」

 短く言って、ガゼルはそのまま部屋を出ていってしまった。

「あっ、ガゼルさまっ」

 追いかけようとするセティアの肩を商人が捕まえる。

「では参りますかな、私の店へ。外に馬車を待たせてある」

「は、はあ…」

 セティアはガゼルの出て行ったドアを不安そうに見やって、仕方なく頷いた。










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