青い月赤い石
7
「似合っている」
ガゼルの呟く言葉に気づいて振り仰いだ。
「ホントですか?」
「ああ」
わずかに目を細め見やるガゼルにセティアはふわりと笑う。
トクン。
心臓が高鳴るのを感じて、先に目を逸らしたのはガゼルの方だった。何故か顔が熱い気がした。
「じゃあこれとこれでいいな?」
ガゼルはさっさと切り上げようとする。が、セティアは躊躇したまま。
「でも…」
「これじゃ、不満か?」
「そうじゃなくて」
セティアは髪飾りを外すと、ネックレスとともにテーブルの上に戻す。
「あたし、こんなにしてもらう理由なんてないです」
うつむくセティア。
ガゼルは、そんなセティアの顎を取って上を向かせる。
「言っただろう。パーティ用だ。お前の為じゃない」
「え…」
セティアの表情が一変する。悲しそうなそれだった。ガゼルはその表情にすら胸が詰まる思いがした。それを慌てて振り払う。
「だから他の女に見劣りしない物を選べ。俺との釣り合いを考えろ。いいな」
「ガゼルさま…」
ガゼルはセティアに背を向ける。
二人を見比べながら、商人は控えめに口を挟んだ。
「では店の方へ来てもらえないか。今日も上等なものを用意してきたつもりだが、店ではこのお嬢さんに合うものを選べるぞ」
「そうだな」
背中を向けたまま答える。
「任せる」
短く言って、ガゼルはそのまま部屋を出ていってしまった。
「あっ、ガゼルさまっ」
追いかけようとするセティアの肩を商人が捕まえる。
「では参りますかな、私の店へ。外に馬車を待たせてある」
「は、はあ…」
セティアはガゼルの出て行ったドアを不安そうに見やって、仕方なく頷いた。
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