「そんなわけ、ないでしょ」
そのセティアの肩を軽く押す。
「きゃっ」
セティアは机の上に仰向けになる。弾みで広がるスカートを慌ててかき寄せようとして、足首を取られた。
「やだぁ」
足をばたつかせるが、ガゼルの力に適う訳もなかった。
身体をくの字に曲げられて、両足を開かされる。そして次に何をするのか、考えてセティアは首を振る。
「ガゼルさん…っ」
ガゼルの肩を掴んで、突っぱねる。
嫌な訳ではない。だが、こんなやり方は嫌いだった。やるならちゃんとベッドの上でと言おうとしたのだが、その前にガゼルはセティアを放した。
「…?」
セティアはそのガゼルに不審に思いながらも急いで足を閉じて、スカートを整える。
「ちょっと出掛けてくる」
「えっ?」
突然そう言い出して、ガゼルはセティアに背を向ける。一瞬、アッケに取られる。
「今夜は帰らねぇ」
言って、部屋を出ようとするガゼルに、慌てて後を追うセティア。
「どうしたの? どこへ行くの?」
そんな話は聞いていなかった。
今の自分にガゼルが何か気を悪くするようなことがあったのだろうか。逆にそれならいつもはすぐに暴力に訴えてくると言うのに。
セティアはガゼルの前に回り込む。
「今夜は帰らないって…?」
不安そうに見上げると、ガゼルはニヤリと笑う。ハッとしてセティアが後ずさるのを、腕を掴んで止められる。
「俺がいない夜はさみしいか?」
至近距離で囁かれ、セティアは真っ赤になる。が、顔を背けて。
「別に」
「嘘つけ」
ガゼルはセティアの顎を取って自分の方を向かせる。
「言えよ。俺がいないと夜は眠れねぇって」
「誰が…っ」
もう一方の手をセティアの腰に回し、引き寄せる。ガゼルは下半身をセティアに擦り付けながら。
「じゃあ、試してみるか?」
「えっ?」
「お前が今夜一晩俺なしで耐えられるかどうか」
ニッと笑うガゼルに、セティアはムッとする。
「そっちだって! 他の女の人の所に行かないでよねっ」
「な…っ!」