[携帯モード] [URL送信]

ハイキュー!!
及影


それは甘くて、それは苦い。

「トビオちゃん」

今でも鮮明に思い出せる。

あの頃の及川さんはまだわりと声が高くて、でも背も高くて。

まっすぐに俺を見ていた。

捕らわれた瞳は、瞬きすら忘れる程夢中になって彼を映していた。

今思えば、自分はわりと純粋だったのかもしれない。

彼が裏で何をやっていたかなんて知らなかったし、知ろうともしなかった。

だからあの人に惹かれてしまった。

ただそれだけだ。

初恋は実らないとはよく言ったものだと、軽くため息をつく。


表面上の彼を愛してしまったのだ。

実らないに決まっている。


「トビオちゃん」

割り切って、過去に置いて来た声がまた俺を呼ぶ。

「今日も可愛いネ」

「…岩泉さん(保護者)はいないんですか?」

「岩ちゃん?ああ、今日はいないよー」

人を馬鹿にしやがって。

ぎゅっ、と拳を握る。

深爪のせいで、痛みはなかった。


この人は、俺が惚れてたことを知ってる。

互いに口には出さなかったけれど、視線が物語っていた。


交わって、逸れて、また交わって。

交わって、それから。


「トビオちゃん、バレーしよっか」

そうだ、もう。

バレー以外で繋がりはないのか。

握り締めた拳は、痛まない。

噛んだ唇は、鉄の味がした。


「良いですよ。やりましょう及川さん」


「可愛くないなぁ」


「言ってること、さっきと逆ですよ」


交わった視線は、今はもう逸らさない。

「目、つぶりなよ」





ほのかな鉄の味と、それから。




(そろそろ付き合わない?)

(嫌です)

(俺を本気にさせたくせに)

END

トビオちゃん、高校行ったら及川さんへの関心なくなってればうまい。



[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!